秦野市・東海大学連携「withコロナ時代の浮世絵展 自粛期間中の思いと終息への願い」を開催しました

現代教養センターの加藤次直准教授と学生たちが、昨年11月7日から1月24日まで「はだの浮世絵ギャラリー」で秦野市・東海大学連携「withコロナ時代の浮世絵展 自粛期間中の思いと終息への願い」を開催しました。2020年度春学期に本センターの開講科目「パブリック・ワークA/挑み力(演習)」で取り組んだもので、「2020年、失われた春と認知の変容」「志村けんさんの死」「浮世絵に〈今〉を見る」「悪疫退散の願い」「浮世絵に〈明日〉を見る」のテーマごとに学生と加藤准教授が選んだ39点の浮世絵と自作の歌やコメントを含む解説を展示しました。

加藤准教授は19年度の春学期から秦野市と連携して「くすっと笑える浮世絵展」「水のある風景展」を開いており今回で3回目。「18年度からパブリック・アチーブメント型教育がスタートし、これまで担当してきた文理融合型の教養の授業も見直す必要に迫られました。本当の意味で“学生が主体的に学ぶ”教養の授業を模索しました。そして、本当に展覧会を開くという授業を企画しました。地域と連携し、授業での学びを地域社会への貢献につなげることで、大学での学びは実際の社会につながっているという実感を得られるのではないかと考えたからです。ただし学生が主体的に学ぶ教養の授業ですので、専門家を育成するのではなく、その分野を楽しみ、生活を豊かにすることを目標としました。自分たちのアイデアや思いが形になることで社会に貢献できる。この体験により、自発的に専門の授業を学びたいと思うようになると思ったからです」と加藤准教授は振り返ります。今年度の春学期は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて授業回数が減り、展覧会の見学もできませんでしたが、はだの浮世絵ギャラリーの約1900点の浮世絵を画像データで見た学生たちは、今の気持ちに合うものや気に入った絵を選んでグループウェア「Teams」で共有。絵を選んだ理由をまとめ、歌を作りました。その後、加藤准教授が絵の時代背景についてまとめ、本センターの田島祥准教授から心理学の視点から展示へのアドバイスがありました。加藤准教授は、「前回の『水のある風景展』では、佐藤恵子教授と二ノ宮リムさち准教授から環境の視点でのアドバイスがあったように、多様な学問領域の教員が集まり、協力してくれる点が本センターのすばらしいところです」と振り返りました。

会場では桜の絵に「すぐそこのお花の匂い嗅ぎたいな今は我慢が命を救う」、相撲の取り組みの絵に「今年こそライバル倒すと意気込んだコロナで全てなくなる試合」、「昔語誉曽我」に登場する6名の役者を描いた絵に「いつからかリモート授業もう慣れた 時間になればパソコン集合」など、学生の率直な思いを数多く披露。中川蘭夢さん(理学部4年次生)は、「たくさんの絵を見る中で直感的に『これがいい』という作品を選びました。私は犬を飼っているので大きな絵の中で小さな犬の姿に目がいき、それについての歌を作ったけれど、別の学生は時代背景を気にしていたり、後ろの背景を見ていたりと、同じ絵でも違う視点で見ていることが興味深かった。オンラインでなく、教室に集まってワイワイと選べたらもっと面白かったのかもしれないけれど、自分に当てはめて絵を見る時間はとても楽しかった」と話します。加藤准教授は、「新型コロナの影響を受け、どこに向けていいのかわからない学生の思いを形にできたのではと感じています。研究として見るときは目に留まらなかった作品も、学生が選んできたことで時代背景や描かれている内容を調べ直すことで“こんな作者がいたのか”と再認識するなど私にとっても学びの多い授業でした」と語りました。