海洋研究所の平所長が静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門の「第3回研究会」で講演しました

海洋研究所の平朝彦所長が9月16日に、静岡県総合研修所もくせい会館で開催された静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門の「第3回研究会」で講演しました。2016年に設置された「地震予知部門」は2022年から「自然災害研究部門」に改組され、県民の防災意識の向上のために、地震に加え津波、火山など自然災害全般に関する調査・研究の成果を発信しています。研究会はオンラインでも配信され、約20名が聴講しました。

平所長は、「深海掘削による巨大地震発生帯のリアルタイム観測~『ちきゅう』の貢献~」と題して、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」を用いて実施した「ちきゅう」プロジェクトの経緯や目的を紹介。東日本大震災後の日本海溝における深海掘削調査の成果を説明し、「掘削によってプレート境界断層を特定してサンプルを回収し、摩擦係数が極端に小さい粘土層を発見しました。また、掘削孔に温度計群を設置して、0.2℃以上の孔内温度異常を観測することで、海溝プレート境界断層が高速すべりを起こしたと明らかにしました。地質学的な見解にとどまらず、巨大津波の発生と関連した高速すべりの証拠発見はとても重要です」と話しました。続いて、地震発生帯のリアルタイム観測について説明するとともに、南海トラフの地殻変動観測体制の構築を国家プロジェクトとして立ち上げる必要性を訴えました。さらに、ハワイ沖を候補としたマントル掘削研究「新モホール計画」について紹介。宇宙の未知の物質「ダークマター」の検出により宇宙の謎に迫ることができる可能性を説明しました。最後に平所長は、「海洋掘削技術が二酸化炭素処分や廃棄物処理といった地球の抱える問題の解決に大きく貢献する」と提言しました。

講演後は、参加者から多くの質問が寄せられ、平所長が一つひとつ丁寧に答えました。