修士課程の学生による硫酸化代謝と抗酸化活性に関する論文が国際誌J Toxicol Sciに掲載されました

大学院農学研究科(修士課程)2年次の森田千紘さん(食品機能科学研究室所属)が筆頭著者で執筆した論文「Investigation of radical scavenging effects of acetaminophen, p-aminophenol and their O-sulfated conjugates」が、日本毒性学会の国際誌The Journal of Toxicological Sciences(47(10), 421-428 (2022))に掲載されました。これは、東海大学と米国トレド大学、宮崎大学、尚絅大学との国際共同研究の成果として発表したものです。

薬物などの代謝物は、薬物代謝(解毒代謝)の観点では不要物とみなされます。そのため、代謝物の研究はそれほど注目されておらず、不明な部分も多いです。そこで、薬物代謝酵素の1つ、硫酸転移酵素が作り出す硫酸化代謝物の生理作用に注目した研究を行っています。本研究は、医薬品としてもよく知られるアセトアミノフェン、これとよく似た構造を持つアミノフェノール、これらの硫酸化代謝物を用いて、抗酸化活性の比較を行ったものです。そこでは、一般に不活性化を担うはずの硫酸化が、生理活性を必ずしも低下させない場合があること、を見出しました。さらに、フェノール性アミノ基が、硫酸化代謝後の抗酸化活性の維持に重要であることを明らかにしました。これらの成果は、医薬品やポリフェノールなどの有効成分の体内での効能を理解するうえで、先駆的な見解となり得ます。

森田さんは、「大学2年次の時より研究室に出入りして今の自分があり、研究で何かを成し遂げて世界に発信したいと、考えてきました。代謝物研究は、なかなか手に入りくいものも多く、私はアセトアミノフェン硫酸体合成法の開発にも取り組んできました。食の機能性に加えて、医薬品の薬効や、有効成分の代謝物の生理活性について注目していきたいです」とコメントしています。