「望星丸を活用した災害医療実証訓練にむけたワークショップ」を開催しました

東海大学では10月28日に静岡キャンパスで、「望星丸を活用した災害医療実証訓練にむけたワークショップ」を開催しました。本学は、内閣官房が今年7月に公募した「災害医療における船舶を活用した実証訓練事業」に、学園の海洋調査研修船「望星丸」(国際総トン数=2174トン)を用いた計画を提案して採択されています。本ワークショップは、11月29日の実証訓練に先立ち、望星丸活用の有用性と課題を明らかにするために実施したものです。当日は、本事業を推進する内閣官房船舶活用医療推進本部設立準備室をはじめ、静岡県と静岡市の防災・災害医療担当課や消防署、第三管区海上保安本部清水海上保安部警備救難課、静岡商工会の役員など清水港港湾関係者らが参加。本学からは、静岡キャンパス清水校舎の海洋学部と人文学部の教員や望星丸の乗組員、湘南キャンパス伊勢原校舎の医学部医学科の教員(総合診療学系救命救急医学・医学部付属病院高度救命救急センター医師)らが出席しました。

初めに、内閣官房船舶活用医療推進本部設立準備室の河合宏一参事官が登壇。本事業の背景や目的について説明し、「船舶と医療の両方を備えた東海大学が真っ先に手を挙げ、我々が望むような提案をしてくださったことにお礼を申し上げます。事業の先頭を走っている東海大に期待しています」とあいさつしました。

続いて望星丸の上河内信義船長が、望星丸の仕様・設備のほか、海洋学部生の実習や本学の全学生を対象とした教育プログラムである「研修航海」など、学内での利用状況について説明。また、国立研究開発法人産業技術総合研究所によるトカラ列島周辺海域における海底地質調査、東京都と連携した沖ノ鳥島の調査、沖縄県・石垣島の海洋環境調査、東京都小笠原村での新型コロナワクチン接種のための医学部付属病院群の医療従事者らの派遣といった多岐にわたる航海実績についても紹介しました。

その後、山田吉彦静岡キャンパス長(学長補佐・海洋学部教授)が、「災害時医療船としての望星丸の活用方法とその展望」をテーマに講演。安定性や機動力に優れた望星丸の特長やバリアフリー化などの課題をはじめ、「海洋調査研究ユニット」「医療用ユニット」といった搭載コンテナの差し替えによる多機能化や、海洋学部と医学部の学生に対する教育、清水港の地政学的意義といった多様な視点から活用の可能性について解説し、「ワークショップや実証訓練を通じて、望星丸が“一私立大学の船”を超えてどのように貢献できるかを検証したい。この実験が本学のみならず、日本の民間船舶の多目的利用のきっかけづくりになればと願っています」と述べました。続いて、スルガベイカレッジ静岡オフィス船舶管理担当の職員が、実証訓練の会場や参加者、スケジュールなどについて説明しました。

休憩をはさんで医学部の野口航助教が、国内における大規模災害時の保健医療体制の整備状況や災害時医療のポイントについて説明。さらに、災害派遣医療チーム「DMAT」の役割を、本病院DMATが取り組んだ東日本大震災における石巻市での活動を例に紹介し、「過去の経験を生かすとともにさまざまな災害医療訓練に参加し、日々対応能力を磨いています。緊急時に貢献できるよう、船舶を活用した医療提供体制についてもしっかりと議論したい」と語りました。

続いて、山田キャンパス長と医学部の中川儀英教授(救命救急科診療科長)が司会を務め、2つのテーマでパネルディスカッションを実施。「船舶を使用した災害医療の在り方」では、本事業のアドバイザーを務める大阪府立大学名誉教授の池田良穂氏と上河内船長、医学部の守田誠司教授(高度救命救急センター所長)、土谷飛鳥准教授が登壇。海からのアクセスや生活全般ができる環境といった望星丸のメリットを生かし、水や食料などの物資運搬、患者の収容・診療・移送、DMATの中継基地としての利用など、災害の規模や状況に応じたフレキシブルな活用方法について意見を交わしました。その後、アドバイザーを務める平成立石病院副院長の大桃丈知氏と医学部の守田教授、青木弘道講師、野口助教が「船舶を活用した災害医療の体制構築」についてディスカッション。時間とともに変化する医療ニーズに対応するシステムの必要性や、「海洋調査研究ユニット」「医療用ユニット」を速やかに搭載するためのクレーン設置といった望星丸の改造案などについて意見を述べ合いました。

最後に山田キャンパス長が、「大変内容の濃い議論ができました。本日の結果を踏まえて実証訓練に臨み、さらに課題を抽出していきます。多くの人にこの取り組みを知ってもらうため、訓練終了後に公開報告会を開催したい」と結びました。