医学部付属病院の高野晋さんが「Gyro Cup 2022」で特別賞を受賞しました

医学部付属病院診療技術部放射線技術科の高野晋さんが、10月15日に都内で開催された株式会社フィリップス・ジャパン主催の「フィリップス MRIユーザーズミーティング全国大会 Gyro Cup(ジャイロ・カップ)」に出場し、「Special Award(審査員特別賞)」を受賞しました。Gyro Cupは同社製MRI(磁気共鳴画像撮影装置)の撮像テクニックを競う大会で、隔年で開かれています。今回は50を超える応募があった中、高野さんは12名のファイナイストの一人としてプレゼンテーション審査に臨み、受賞を果たしました。

MRIは磁場が発生している筒状の装置の中で体に電波を当て、さまざまな角度で体内の断面を撮像する医療機器です。骨や筋肉、腱、血管、神経、臓器を精密に見ることができ、正常な組織と病変がある組織を区別しやすい反面、検査時間が15分から45分と長くかかるという課題があります。高野さんは、通常は別々に撮像する3つの画像(解剖学的な構造が見やすいT1強調画像、病変を確認しやすいT2強調画像、軟骨を観察しやすいプロトン密度強調画像)を、画像処理の手順に1工程を加えることで、1回で撮像する方法を考案し、撮像時間を半分以下に短縮することに成功。この方法を、「カメレオン」(Change contrast with Multi Echo of Low-high Encoding at One Scan= CHAMELEON)と名付けました。

高野さんは、「たとえば膝は、たった1回のスキャンで、骨折と捻挫(T1強調画像)、嚢胞やガングリオン、靱帯、腱(T2強調画像)、半月板(プロトン密度強調画像)を観察できる画像が得られます。T1強調画像とT2強調画像は相反する撮像条件が必要な画像ですが、それらを一度に得られるだけでなく、2枚で4分26秒かかっていた撮像時間が、3枚合わせて2分1秒で完了します。診療に不可欠な3つの画像を短時間で撮像できれば患者さんの負担軽減になり、臨床的な利点も大きい」と説明。「医師らと話し合いながら、『カメレオン』の有効な活用法を見出していくのが今後の目標です。国際学会や論文で発表して院内だけでなく世界に広め、より多くの人に活用してもらうことで臨床に貢献できればうれしい」と展望を話します。

「付属病院では、MRIの黎明期から他の医療機関などに先駆けて撮像法や活用法の研究を進めており、MRIに関する環境は全国屈指です。私も先輩方の指導を受けながらMRIの奥深さに魅了され、単に検査をこなすだけでなく、医療チームの一員として専門知識や技術を追究し続けたいと考えて研究を進めてきました。注目度も波及効果も高いGyro Cupでファイナリストになれただけでなく、受賞できたことは感無量です。見守ってくれた上司をはじめ、現場のスタッフや日頃から共同研究を進めている医師の皆さんに感謝するとともに、付属病院MRIチームの責任者として、MRIを用いた臨床と研究のさらなる発展に向けて努力していきます」と意欲を語っています。