第55回学校法人東海大学健康推進会議を開催しました

第55回学校法人東海大学健康推進会議を12月2日に、オンラインで開催しました。「学園のダイバーシティ推進と生徒・学生等の支援を考える」をテーマに、学校法人東海大学の本部職員や付属諸学校、東海大学で健康推進、養護を担当する教職員ら約50名が出席しました。

開会に当たって東海大学ユニバーシティビューローの宮﨑誠司ゼネラルマネージャー(健康推進担当)があいさつし、「東海大学では3月にダイバーシティ推進宣言を発表したことで、共通理解を深めていただきたいとの考えからテーマを設定しました」と会議の主旨を語りました。続いて法人初等中等教育部の中出光政部長が、「初等中等教育機関では教職員の働き方改革に力を入れており、心身の健康推進に尽力しているところです。そのためにも本日のプログラムは貴重な機会であり、多様性への対応は初等中等教育機関における関心も高く、私自身も今回の会議を通じて勉強したい」と話しました。

講演では、まずジェンダー論、社会支援が専門の元田州彦教授(文化社会学部心理・社会学科)が講演。「性/性別の多様性をめぐり、何を認知し、いかにサポートするか」と題し、教育の現場で教職員はどのような意識で当事者と向き合うことが求められているのか、現代社会における性や性別の多様性尊重のあり方について解説。男性女性の差異を質的に異なるものとしてとらえる「雌雄二型・男女二元モデル」をはじめ、それに対して男性・女性を明白に区別することはできず、個人は男女を両極とした連続体上のどこかに位置づけられると考える「連続体モデル」と呼ばれる性別の捉え方を説明。さらに、近年広がっている性別を構成する要素として「性自認」「性的志向」「性表現」「身体的性」の4項目から自らの性別の特徴を位置づける「多次元モデル」の考え方を紹介し、「一人ひとりがどのような性意識をもってどう生きているのか、多様なセクシャリティのあり方を社会が支え、対応が求められている」と指摘しました。そのうえで、子どもの性的発達と性/性別の多様性について、性自認が形成される年齢や性別違和を抱える当事者への相談や支援の歴史などを詳しく解説し、「当事者の立場と言葉を受け止める積極的な傾聴と支持が大切」と語りかけました。

続いてユニバーシティビューローの辻由希ゼネラルマネージャー(キャンパスライフ・評価担当/政治経済学部政治学科教授)が、「教育機関における多様な性の児童生徒・学生の『学びの保証』」をテーマに講演。東海大学におけるダイバーシティ推進の取り組みや関連法令を紹介するとともに、教育機関で当事者が直面する困難の要因として、学生、教職員の差別意識、支援・相談場所の不足、トイレや更衣室、寮といった設備の不備のほか、制服、呼称、体育・運動部など性別で分ける活動・指導といった例を挙げ、「ハード・ソフト両面のインフラ整備が重要」と語りました。また、「性自認や性的指向は非常にプライベートな領域であり、本人が望んでいない、話す準備ができていないのに土足で踏み込むべきではありません。学校に相談できる場所があり、理解・応援している教職員がいることが、悩んでいる児童生徒・学生にさりげなく伝わるような環境づくりが大切です。また、いじめやからかいは学校全体で防ぎ、対処していかなくてはなりません」と訴えました。

後半は湘南健康推進室報告や各種事務連絡が行われたほか、東海大学の内田晴久副学長があいさつし、「本学ではダイバーシティ推進宣言に基づき、多様な学生からの相談を受ける場を設ける計画を進めており、これからの時代に合わせて学生対応を充実させていく考えです。引き続き、さまざまな場面で情報共有を進めていきたい」と語りました。また、最後に湘南健康室産業医の灰田宗孝教授(スポーツ医科学研究所)と沓澤智子教授(医学部)が閉会の辞を述べ、それぞれ「性の多様化に関する事例は今後も増加が考えられるため、学園全体での対応が必要」と語りました。