公開講演会「東日本大震災における被災図書館の支援活動~いわて高等教育コンソーシアムの活動を振り返って~」を開催しました

ティーチングクオリフィケーションセンターでは1月21日に、公開講演会「東日本大震災における被災図書館の支援活動~いわて高等教育コンソーシアムの活動を振り返って~」をオンラインで開催しました。今回は、2011年3月に発生した東日本大震災で被害を受けた岩手県の公共図書館の復旧支援活動に尽力し、現在は関東学院大学で教鞭をとる千錫烈氏を講師に、実際の支援活動や復興において図書館の果たすべき役割について講演いただきました。

千氏ははじめに図書館の存在意義について解説し、「図書館は情報収集の場だけでなく、人が幸せに生きるために不可欠な知的好奇心を高める役割も担っています」と話しました。続いて、東日本大震災で被害を受けた岩手県の5つの公共図書館について、その被害規模や復興までの期間を説明。また、自身が震災から半年後に盛岡大学の司書課程教員に着任した後、12年2月に岩手県内の教育機関で構成される被災図書の修復・整備の研究チーム「いわて高等教育コンソーシアム『被災地の図書館修復及び整備についての研究チーム』」を結成した経緯について語り、「縁もゆかりもない地域でノウハウもなかったので具体的にどのような支援活動が必要なのか、何もわかりませんでした。そこで学内で知識を持つ方々を集めて、個人ではなく組織として問題解決を目指そうと11年12月に盛岡大学被災地図書館支援プロジェクトを立ち上げました。活動の中で、他機関との連携が重要と考え、被災地の図書館修復及び整備についての研究チームが発足しました」と話しました。さらに、「地域に根差した具体的な支援」を方針に掲げて取り組んできた被災図書館の調査や資料の救済修復、再開に向けた準備などの支援活動について解説。汚泥除去や消毒、デジタル化など資料活用へ向けた作業を説明するとともに、影絵劇上映会などの復興イベントについても紹介しました。

最後に、千氏はこれまでの活動を振り返り、「連携によって負担が分散されるだけでなく継続的な支援体制の構築が可能となるなど、人とのつながりの重要性をあらためて感じました。しかし、私たちの研究チームは補助金の終了に伴い15年度で活動は終了してしまいました。永続的に支援活動を行うには、金銭や人材などさまざまな課題があるのが現状です」と話すとともに、図書館の未来について「今後は、図書館がさらにコミュニティと協働することが考えられるので、社会での結びつき『ソーシャルキャピタル(社会関係資本)』が育まれる場になっていくのではないでしょうか」とまとめました。