総合医学研究所が「第26回公開研究報告会」を開催しました

総合医学研究所が3月10日に伊勢原校舎で、「第26回公開研究報告会」を開催しました。この報告会は、所員が1年間の研究成果を発表するため、毎年同時期に実施しているものです。今回は6名がプレゼンテーションし、教職員や大学院生ら約40名が参加しました。

本研究所は、基礎医学研究の成果を新技術の開発や臨床に生かし、総合的な医学の発展に寄与することを目的として1980年に創設。国内外から注目される多くの研究成果を発表しています。現在は、本学医学部医学科の教員を兼務する所員19名が、「再生医学」「ゲノム医学」「創薬」「血液・腫瘍学」「肝臓・腎臓病学」の5部門に関する研究に従事。メディカルサイエンスカレッジオフィス(生命科学統合支援担当)の技術職員や湘南校舎にあるマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)、先進生命科学研究所の研究者をはじめ、学内外の医学・生命科学・理工学系学部や研究機関との共同研究を推進するとともに若手研究者を育成し、医科学研究のさらなる活性化を図っています。

当日は、安藤潔所長(内科学系血液・腫瘍内科学教授)の開会のあいさつに続き、本年度コアプロジェクトを含む4テーマについて所員が研究成果を発表。今後の展開や臨床への応用などについて活発な質疑応答や意見交換を行いました。

続いて、安藤所長と稲垣豊教授(基盤診療学系先端医療科学)が特別講演し、本研究所における研究活動を振り返りました。初めに稲垣豊教授が登壇し、文部科学省の平成27年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の採択を受けた「臓器線維症の病態解明と新たな診断・予防・治療法開発のための拠点形成」に関する成果を紹介。肺や肝臓、腸など全身に発症する線維症の研究を臓器横断的に進めるための拠点として、大学院医学研究科にマトリックス医学生物学センターを設置し、センター長として研究に従事した日々を振り返りました。また、所員の平山令明客員教授らと共同で取り組んでいる肝線維症治療薬に関する研究の進捗状況を報告し、「ターゲット分子Tcf21の治療標的としての妥当性をさらに詳細に検証し、臨床に近づけたい」と語りました。

今年度で退職する安藤所長は、42年にわたる本研究所の歴史をたどりながら、医学部の特徴的な研究の一つであり、自身も携わってきた疾患モデル動物を使った研究を紹介。がんの増殖を促進する「ヒトH-ras遺伝子」を挿入した遺伝子改変マウスによる化学発がん研究や、アメリカ・ハーバード大学医学部ダナ・ファーバーがん研究所における細胞周期に関する研究、体外増幅させたヒト造血幹細胞の移植治療、血液疾患モデル動物の作製、第Ⅲ相臨床試験に進んでいる本研究所発の画期的な慢性骨髄性白血病治療薬「PAI-1阻害剤」の成果について説明しました。最後に、今後の医学研究や若手研究者の育成に関する参加者からの質問に答え、「研究を続けるエネルギーの源となるのは好奇心です。研究環境は変化しており、ビッグデータやAIの活用など研究方法も大きく変わりつつありますが、常に志を保ち、柔軟な発想を持ってそうした変化に適応し、医学研究をさらに進展させてほしい」と語りました。

※当日のプログラムは下記のとおりです。
[開会の挨拶]
安藤 潔所長【血液・腫瘍学研究部門 部門長】(内科学系血液・腫瘍内科学教授)

[研究報告]
◇岡 晃【ゲノム解析研究部門】(基礎医学系分子生命科学講師)
「疾患関連変異の機能解析」
◇中川 草【ゲノム解析研究部門】(基礎医学系分子生命科学准教授)
「大規模塩基配列情報を活用したRNAウイルス解析~新型コロナウイルスを含めて~」
◇永田栄一郎【再生医療学研究部門】(内科学系脳・神経内科学教授)
※2022年度コアプロジェクト
「液-液相分離現象(LIPS)におけるイノシトール・ポリリン酸の役割」
◇今西 規【ゲノム解析研究部門 部門長】(基礎医学系分子生命科学教授)
「神奈川県における超過死亡はなぜ起こっているのか」

[特別講演]
◇稲垣 豊【肝臓・腎臓病学研究部門】(基盤診療学系先端医療科学教授)
「臓器線維症に対する新たな治療戦略と臨床展開」
◇安藤 潔【血液・腫瘍学研究部門 部門長】
(総合医学研究所長/内科学系血液・腫瘍内科学教授)
「疾患モデル動物と創薬」

[閉会の挨拶]
松阪泰二次長【肝臓・腎臓病学研究部門】(基礎医学系生体構造機能学教授)