内田裕久特別栄誉教授が日独水素エネルギーオンラインシンポジウムで基調講演を行いました

7月19日に開かれた日独水素エネルギーオンラインシンポジウムで、本学の内田裕久特別栄誉教授が基調講演を行いました。日独交流160周年を記念して日本貿易振興機構(JETRO)とフラウンホーファー研究機構の共催で開かれたもの。国際水素エネルギー協会のフェロー・副会長を務める内田教授が「日本の水素利用技術の背景と未来」をテーマに語り、両国から60をこえる企業が参加しました。

在ミュンヘン日本国総領事館総領事の前川信隆氏やJETROミュンヘン事務局長の高塚肇氏らのあいさつに続いて講演した内田教授は、日本では1960年代から70年代の高度経済成長期に公害によって人体への悪影響が引き起こされたことや、地震大国で東日本大震災発生時には東京電力福島第一原子力発電所の事故によって多くの被害がもたらされたことなどに触れ、「これらを契機に再生可能エネルギーへの関心が高まっていきました」と説明。「風力や太陽光などのクリーンエネルギーは天候に左右され供給量に波があることから、水素と二酸化炭素から電力を生み出す方法に注目が集まるようになりました。近年、水素とチタンなどの金属を混ぜた『水素吸蔵合金』に圧力や温度を利用して水素を貯蔵・放出できるようになったことから世界各国で活用されています」と解説しました。

内田教授は国内外の企業による水素の活用例を紹介し、「2018年6月には神奈川県川崎市に世界初となる『水素ホテル』が誕生しました。使用済みプラスチックから水素をつくり出し、ホテルの約30%のエネルギーを供給する、画期的な取り組みです」と説明。自身も工学部の研究室の学生と愛媛県西条市で水素吸蔵合金を活用した農業や魚の養殖に取り組んできたことも紹介しました。「日本の産業技術は世界トップレベルで、大企業では水素の活用も進んでいますが、国家戦略としての取り組みは少なく、海外諸国に遅れをとっています。中小企業でも積極的な取り組みを進め、日本とドイツが連携して水素社会実現に向けて世界をリードしてほしい」とまとめました。