秦野市内の屋外彫刻コンディション調査「市民と大学の協働による屋外彫刻の保存と活用事業」を実施しました

教職資格センターでは9月17日に秦野市立おおね公園で、「市民と大学の協働による屋外彫刻の保存と活用事業」を実施しました。本センターでは学芸員を目指す学生が屋外彫刻に触れながら学ぶ機会を設けようと、2014年度から松前記念館と連携し、湘南キャンパス内にあるブロンズ像のメンテナンス活動に取り組んでおり、近年では地域貢献活動として秦野市や藤沢市、東京都北区などでもメンテナンスを行っています。今回は、これまでの実績から秦野市との連携事業へと進展したもので、学生11名が参加しました。  

初めに、秦野市役所文化スポーツ部文化振興課文化交流担当主事補の福島宏氏があいさつに立ち、「秦野市内には多数の屋外彫刻がありますが、設置されてから30年以上経つものもあり、彫刻の劣化が懸念されています。今後も管理していくにあたり、メンテナンスの方法や作業の優先順位を調査したいと考えています」と企画の趣旨を説明。学生たちは屋外彫刻調査保存研究会運営委員の篠崎未来氏と本センターの篠原聰准教授の説明を受けながら、石彫りの横山徹作『天空の塔』やブロンズ像の小島弘作『希望』、ステンレス彫刻の大隅秀雄作『MANAZASHI』(まなざし)などの状態を調査しました。おおね公園は住宅街や駐車場付近に彫刻が設置されていることから、大気汚染や自然環境による汚れの付着、人との接触による傷や摩擦などが確認でき、屋外彫刻の調査結果をカルテに記入していきました。 

その後、湘南キャンパスの松前記念館で、篠崎氏が「彫刻ってどんなもの?」をテーマに設置環境や素材の特性、地域との関係性などを講義。「屋外彫刻は市民の財産であり、日常の中で触れ合える芸術作品です。どの作品にも制作経緯や設置理由、設置時期などバックグラウンドがあります。さまざまな情報を踏まえて、屋外彫刻が最大限活用できるプランを考えることが重要となります」と説明しました。また、篠原准教授は、「屋外彫刻の調査とカルテの作成は彫刻メンテナンスに必須の作業です。今後はカルテに基づき優先順位の高い彫刻メンテナンスが可能になります。学芸員に求められる保存修復のスキルだけでなく、自治体との連携など、地域を巻き込む力をも育めるよう、皆さんの柔軟な考えに期待しています」と話しました。学生からは、「遠目では分からなかったけれど、作品を近くで見ると劣化状況が確認できました。管理システムの必要性を強く感じました」「作品だけでなく、周囲の環境と安全面に目を向けることの大切さを学びました」といった声が聞かれました。