平塚盲学校でワークショップ「笛吹ボトルの音色~呼吸 いのちのかたち~」を実施しています

東海大学教職資格センターと文明研究所では10月14日から来年1月にかけて、神奈川県立平塚盲学校の生徒を対象に、ワークショップ「笛吹ボトルの音色~呼吸 いのちのかたち~」を実施しています。神奈川県と本学が展開する「ともいきアートサポート事業(創作×地域展示)」の取り組みとして、3回にわたって笛吹ボトルを制作するものです。映像作家であり、大阪府立堺支援学校で講師も務める亀井岳氏と岡山県立大学准教授の真世土マウ氏、東京大学総合研究博物館助教の鶴見英成氏、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎氏を講師に招き、本学からは文明研究所「東海大学所蔵文化財の活用のための基盤整備」プロジェクトの研究員で文学部文明学科の吉田晃章准教授と、文明研究所員で教職資格センターの篠原聰准教授、「博物館実習2(松前記念館実習)」を受講している学生が参加します。

初日となった今回は、はじめに亀井氏と広瀬氏が授業の進め方や笛吹ボトルの音について説明した後、吉田准教授が「笛吹ボトルをめぐり」をテーマに講演。アンデス文明の歴史や文化について紹介し、「歌や楽器の演奏などの音楽は、今から約4500年前から楽しまれてきたことが遺跡の調査から分かっています。アンデスでは大地や山の神への感謝を音楽や踊りで表現しており、それは代々受け継がれて今もなお続けられています。儀礼でかつて使われていた楽器の一つが笛吹ボトルです。今日は、東海大学から4点のコレクションを持ってきたので、デザインや質感を触って確かめてみてください」と話しました。続いて、鶴見氏が「考古学という学問」と題し、昔の人々の生活や考古学のアプローチのよる調査方法などについて講演。その後、生徒たちは真世土氏と学生らによるサポートのもとで、笛吹ボトルの制作に挑戦しました。真世土准教授が指導する岡山県立大学の学生が制作したボトルに、土粘土で作った自分の顔を貼り付けた生徒たちは、「紙粘土や油粘土と違って、かなり冷たい」「自分の顔を作るって難しいな」と話しながら、黙々と取り組んでいました。

同校小学部長の沖津有吾さんは、「昨年も同事業でワークショップを実施していただき、今年で2回目になります。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、本校の介護等体験の授業もなくなり、児童が東海大学の学生の皆さんと交流するのは1年ぶりです。学生の皆さんは、児童・生徒に寄り添ってアドバイスやサポートをしてくれていたので、楽しく取り組むことができたと思います。また、本校の小学部には芸術を専門とする教員がいないので、講師の方々と学芸員を目指す学生の指導方法や着眼点は、とても参考になりました。こうした交流の機会は、児童・生徒たちにとって重要な経験になります」と話しました。また、同事業を管轄する神奈川県の相場延弘さん(福祉子どもみらい局共生推進本部室共生グループ副主幹)は、「美術館では体験できない、文化財に触れるという機会を設けました。また、専門知識のある先生方のお話や指導を受けながらの制作で、さまざまなことを感じてもらえたのではないでしょうか。来年には展示も行うので、生徒たちの自信にもつながると思います。今回の経験で子どもたちの美術への興味や関心、芸術の道に進むきっかけになることを期待しています」と語りました。

学生たちは、「自分自身の作品づくりに対する発想力や考え方の幅を広げるいい刺激になりました」「子どもたちは手を止めることなく制作に取り組んでいて、迷いのない創作に驚かされました」と話していました。

今回、児童・生徒らが制作した作品は、来年3月に湘南キャンパスの松前記念館で開催する展示会で紹介する予定です。