清水キャンパスでは、11月26、27日に東海大学海洋科学博物館講堂をメイン会場に「第12回ISAJ・学際研究シンポジウム2021」を開催しました。同シンポジウムは、NPO法人Indian Scientists Association in Japan(ISAJ)が、インドと日本をはじめとする世界各国の科学者が新たな情報などを共有することを目的に開催しているもので、今回は「Science-Technology-Innovation Towards A Sustainable World」をテーマに設定。国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」の17の目標のうち、主に「14 海の豊かさを守ろう」の実現に向けた取り組み「国連海洋科学の10年」が今年から開始したことを受けて、持続的資源利用や気候変動、環境問題に焦点を当てました。本学からは海洋学部と大学院海洋学研究科、海洋研究所、総合理工学研究科、地球科学研究科の教員と学生が参加。WEBビデオ会議システム「Zoom」と併用で開催しました。
当日は、初めに海洋学部のマハパトラ・ケダーナッシュ非常勤講師(ISAJ理事)が開会を宣言し、「『国連海洋科学の10年』の最初の年に開催できることをうれしく思っています。こんなにも多くの方々にご賛同いただけるとは思っていませんでした。東海大学や静岡市をはじめとする各方面からのご尽力に感謝します」と語りました。続いて、本学部の齋藤寛学部長、ISAJ会長のカウル・スニル博士、サンジェイ・クマ―ル・ヴァルマ駐日インド大使が登壇。その後、オンラインで出席した本学の山田清志学長があいさつし、参加者への歓迎のメッセージを述べるとともに、「このシンポジウムで実りある議論が行われることを期待しています」と語りました。また、静岡市の田辺信宏市長からは「日本には“継続は力なり”という言葉があり、12回目を迎えるシンポジウムが回を重ねるごとに実績を上げていることに敬意を表します。日本全国にキャンパスを構える東海大学の建学の地であり、海洋学部を擁す清水で、水深2500mを誇る駿河湾での学術的研究や皆さまの知識を共有し、このシンポジウムが有意義な機会になることを願っています」との期待が寄せられました。
シンポジウムでは、海洋研究所の平朝彦所長が「インドと日本のプレートテクトニクスの比較~大陸地殻の進化への意義~」をテーマに基調講演を行いました。インドの周辺各国と日本の南海トラフの震源域などを比較して解説。また、日本の地球深部探査船「ちきゅう」やアメリカの「ジョイデス・レゾリューション号」、ヨーロッパの特定任務掘削船を用いて世界中の海底を掘削し、地質試料の分析や孔内観測装置によるデータ解析などによって地球内部や生命誕生・進化の謎の解明に迫る「総合国際深海掘削計画(IOAP)」について説明しました。続いて、海洋学部環境社会学科の仁木将人教授が「溶融スラグの干潟材料への適用性に関する水槽実験」をテーマに講演。一般家庭のゴミ焼却過程で生成される「溶融スラグ」を再生資源の干潟基盤材へ使用するための水槽実験では環境への悪影響が確認されなかったことや、アサリの定着やリンの間隙水への保持を確認し、基盤材としての可能性が認められたことを報告しました。また、航海工学科の坂上憲光教授は「位置・姿勢の安定化に役立つデバイスを持つダム検査用水中ロボット」と題し、制御の難しい水中ロボットの機動性を向上させるために必要な負圧効果板(NPEP)の導入実験について講演しました。講演後には清水港興津ふ頭に移動し、平朝彦所長による案内のもと海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」の見学ツアーも実施しました。
翌日には招待講演やディスカッションを実施。本学の登壇者と講演テーマは下記のとおりです。
◆沖村邦雄教授
「二酸化バナジウム膜の絶縁体-金属転移を利用した省エネ・新技術のためのスマートウィンドウ」
◆村崎謙太助教
「日本の海に生息するオステオディスカス属について」
◆マハパトラ・ケダーナッシュ非常勤講師
「沿岸水のモニタリングにおけるリモートセンシングの駿河湾および日本の東海岸沿岸水域への適用」
◆花森功仁子非常勤講師
「農業の豊かさを維持するには?静岡県の平飼い作物の活用と保護」
◆永野ひよりさん(海洋文明学科3年次生)
「Covid-19による大学生と地域社会との連携への影響」
◆チン・リーケナさん(大学院地球環境科学研究科地球環境科学専攻3年次生)
「カンボジアの小規模漁業について」
◆田邊良平さん(大学院海洋学研究科海洋学専攻1年次生)
「スルメイカの精子配分戦略」