大学院生で特定助手の三神瑠美さんと池上聖人さんが日本学術振興会の特別研究員に採択されました

大学院総合理工学研究科の三神瑠美さん(指導教員:荒井堅太講師=理学部)と池上聖人さん(指導教員:黒田輝教授=情報理工学部長)が、令和6年度(2024年度)の独立行政法人日本学術振興会特別研究員(DC2)に採択されました。この制度は大学院博士課程に在籍する若手研究者を対象に、自由な発想で主体的に課題を選びながら研究に専念する機会を与え、学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保を図るもので、2年間の採用期間は研究奨励金が給付されます。2名は現在、学びながら授業を担当して給与を得る本学の「特定助手」に任命されており、今回の採択を受けたことで来年度からは日本学術振興会特別研究員として引き続き本学で研究を進めます。

三神さんの研究テーマは「小胞体内蛋白質品質管理を制御するカルシウムイオン依存性フォールディング触媒の開発」です。アミノ酸が連なっているタンパク質は、折りたたまれて特定の構造をとること(フォールディング)により、さまざまな機能や役割を担います。正しく機能するために不可欠な酸化的フォールディングはその過程で失敗することがあり、構造成形不全のタンパク質が細胞内に沈殿・沈着すると、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患などの原因となることが知られています。三神さんは、細胞内の物質輸送を司る小胞体内に高濃度で存在するカルシウムイオンに着目し、小胞体内で特異的に活性化される化合物の合成に成功。その物質がカルシウムイオンの存在下において正しい酸化フォールディングを促すことを明らかにし、神経変性疾患などの薬剤開発につながる研究を進めています。

三神さんは、「アルツハイマー病など社会の高齢化に伴って増加が懸念される神経変性疾患の予防や治療に資する創薬につながる研究を続けていきたい。特別研究員に応募するにあたり、目指す研究者像を考える過程で自分と深く向き合ったのは貴重な経験でした。今後はさらに化合物の有機合成についての知見を深め、細分化された専門的な研究分野を見渡せる力のある研究者になりたい」と抱負を語っています。荒井講師は、「三神さんは努力家でポテンシャルを秘めた研究者。常に“やればできる”ことを体現してくれます。三神さんをロールモデルに、後輩たちにも続いてほしい」と話しています。

池上さんの研究テーマは「磁気共鳴画像化法による完全変態昆虫の変態過程の解明」です。幼虫から蛹体(サナギ)を経て成虫になると形態や行動、食生活が大きく変わる完全変態昆虫として知られるカブトムシについて、同一個体を傷つけることなく観察できるMRIで撮影し、変態過程の体内構造を明らかにすることに成功しています。「どろどろに溶けた状態になる」といわれてきた蛹体の内部をMRIで撮影すると、崩壊した幼虫の組織で作られた体液を使って成虫の器官が生成され,やがて成虫体全体が形成されることが分かりました。池上さんはそのメカニズムの解明を目指し、さらに研究を進めていきます。

「狭き門を通り、あらためて身がひきしまる思いです」と池上さん。「サナギの体内で起きている器官・組織・細胞の崩壊と再構成の仕組みを解明することは、新たな再生医療への応用可能性につながります。人体やマウスを対象とするものが大勢を占める再生医療の研究で、昆虫の変態に着目する自分の研究は注目されないかもしれないとの思いがありましたが、今回の採択でそれが払しょくされました」と話しています。黒田教授は、「非常にレベルの高い日本学術振興会特別研究員採択は本人たちの努力のたまもの。今回の採択を機に、よりいっそう研究に打ち込んでほしいと思います。東海大学は、経済的な負担を減らし余裕をもって研究に取り組める特定助手制度も整っているので、大学院博士課程に進む学生がさらに増えれば」と期待を寄せています。