海洋研究所の長尾客員教授が清水テルサ防災セミナーで講演しました

海洋研究所の長尾年恭客員教授が2月26日に、静岡市東部勤労者福祉センター清水テルサで開かれた「防災セミナー」の講師を務めました。認定NPO法人「富士山測候所を活用する会」理事で、富士山環境研究センター・シニアリサーチフェロー、一般社団日本地震予知学会の会長も務める長尾客員教授は、「清水で知っておきたい地震と津波と火山と防災」をテーマに講演。市民ら約50名が聴講しました。

はじめに、富士山や箱根山といった静岡とその周辺の火山について、噴火の可能性や今年1月15日に発生したトンガの火山島噴火に伴う地震や津波による被害について紹介。続いて近い将来の発生が懸念されている「南海トラフ巨大地震」について解説し、古文書から明らかになっている西暦684年から1854年までに起きた過去の南海トラフ地震や富士山における貞観の噴火(864年)と貞観の地震(869年)の関連性などに言及。また、津波の基礎知識として東日本大震災で発生した津波の被害なども紹介し、「津波で港に置かれている貨物用のコンテナも打ち上げられ、鉄の塊が住宅や人にぶつかることが懸念されます。また、その速度はとても速く、大洋を渡るときは時速700km、湾内では200km、陸上では40kmほどになります。津波被害による死因は溺死ではなく打撲が多く、コンテナや流木、家屋への衝突が原因。鉄筋コンクリートの建物は基本的に大丈夫なので、身近な避難先を確認しておくことが大切です」と語りました。

また、最新のコンピュータシミュレーションを用いた地殻構造探査(地震探査)によって判明した東海~南海地震の発生間隔の予測や津波研究において地震計のデータではなく、海面の変化を宇宙からとらえる「津波電離圏ホール」に関する最新の知見を紹介。「津波が発生した際、その警報をいかに早く解除できるかが気象庁の課題となっています。津波電離圏ホールは宇宙の衛星から監視したデータを用いるため、早期の判断が可能になります」と話しました。また、地震活動を可視化し地下の状況について調べた「地下天気図」、複合災害時の備えやコロナ禍における避難時の注意点などについても幅広く説明しました。

終了後の質疑応答では、昨年12月に内閣府の中央防災会議の作業部会がまとめた北海道から東北地方太平洋沖にある日本海溝と千島海溝沿いでマグニチュード(M)9級の巨大地震が起きた際の被害想定に関する質問が寄せられたほか、静岡市清水区内における防災対策のあり方についてなど、熱心な意見交換が行われました。