総合医学研究所が第25回公開研究報告会を開催しました

総合医学研究所が3月11日に伊勢原キャンパスで、「第25回公開研究報告会」を開催しました。この報告会は、本研究所の所員が1年間の研究成果を共有するため、毎年同時期に実施しているものです。今回は7名が講演し、教職員や大学院生ら約50名が参加しました。

本研究所は、基礎医学研究の成果を新技術の開発や臨床に生かし、総合的な医学の発展に寄与することを目的として1980年に創設。国内外から注目される多くの研究成果を発表しています。現在は、本学医学部医学科の教員を兼務する所員19名が、「再生医学」「ゲノム医学」「創薬」「血液・腫瘍学」「肝臓・腎臓病学」の5部門に関する研究に従事。メディカルサイエンスカレッジオフィス(生命科学統合支援担当)の技術職員や先進生命科学研究所、湘南キャンパスにあるマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)の研究者をはじめ、学内外の医学・生命科学・理工学系学部や研究機関との共同研究を推進するとともに若手研究者を育成し、医科学研究のさらなる活性化を図っています。

当日は、開会に先立ち本年1月3日に逝去された猪子英俊博士(元・本学医学部長、本研究所長)をしのび、黙祷を捧げました。続いて安藤潔所長(内科学系血液・腫瘍内科学教授)が、「ディスカッションによって研究を深めていくのも本報告会の目的です。研究の方向性や共同研究の可能性、臨床への応用などについて、ぜひ活発に議論してください」と開会の言葉を述べました。

報告会の前半では、特別研究員制度により登用された若手研究者3名が最新の成果を発表しました。続いて、本年度コアプロジェクトのリーダーを務める秦野伸二教授(基礎医学系分子生命科学)が、「液-液相分離に着眼した神経変性疾患発症メカニズムに関する研究」をテーマにプレゼンテーション。MNTCの喜多理王所長(理学部物理学科教授)らと連携して進めている、ALS2(筋萎縮性側索硬化症の一種)の細胞内挙動と液-液相分離(溶液が、溶質を多く含む相と希薄な相の2相に分離する物理現象)との関連を明らかにする研究の進捗状況を紹介しました。後半は、特に顕著な進展があった研究者3名が最新の成果を発表。各研究について活発な意見交換を行いました。

最後に松阪泰二次長(基礎医学系生体構造機能学教授)が、「実り多い報告会になりました。今後も多用な分野の研究者らと連携し、医科学研究をさらに進展させていきましょう」と結びました。

なお、当日のプログラムは下記のとおりです。

[開会の挨拶]
安藤 潔所長【血液・腫瘍学研究部門 部門長】(内科学系血液・腫瘍内科学教授)

◇今井 仁【創薬・病態解析研究部門】(総合診療学系健康管理学助教/特別研究所員)
「クローン病における病原性共生菌と免疫応答の解明と臨床応用」
◇細川裕之【血液・腫瘍学研究部門】(基礎医学系生体防御学講師/特別研究所員)
「リンパ球前駆細胞の持つT細胞分化能を制御するLmo2複合体の解明」
◇長谷川政徳【創薬・病態解析研究部門】(外科学系腎泌尿器科学講師/特別研究所員)
「フェロトーシス誘導による泌尿器科領域癌への新規治療戦略」

※2021年度コアプロジェクト
◇秦野伸二【創薬・病態解析研究部門】(基礎医学系分子生命科学教授/メディカルサイエンスカレッジ(伊勢原研究推進部)部長)
「液-液相分離に着眼した神経変性疾患発症メカニズムに関する研究」

◇今西 規【ゲノム解析研究部門 部門長】(基礎医学系分子生命科学教授)
「ゲノム配列解析による子宮頸がん再発モニタリングのためのリキッドバイオプシー」
◇永田栄一郎【再生医療学研究部門 部門長】(内科学系神経内科学教授)
「生体内におけるイノシトール・ポリリン酸の役割」
◇ジョルディ ショール【再生医療学研究部門】
(外科学系整形外科学特定研究員/酒井大輔准教授研究室所属)
「椎間板修復に向けたラット椎間板変性モデルへの幹細胞椎体内移植は椎間板内移植よりも優れる」

[閉会の挨拶]
松阪泰二次長【肝臓・腎臓病学研究部門】(基礎医学系生体構造機能学教授)