東海大学沖縄地域研究センターがウェブセミナー「八重山地域における生態系研究の現状と今後」を開催しました

東海大学沖縄地域研究センターでは、3月17日にウェブセミナー「八重山地域における生態系研究の現状と今後」(主催:東海大学、共催:琉球大学、総合地球環境学研究所)を開催しました。本センターがある沖縄県・西表島を含む八重山諸島は、豊富な生物文化多様性と独特な生態系が共存し、長い歴史を有する地域です。この地域の自然と文化の価値を再認識し、持続的な利用と保全を両立させる方法を探ることが大切であるという考えから、本学では1976年から西表島に研究施設を設置し、学内外の研究者の連携のもと自然・社会科学に関する研究と教育活動を行ってきました。今回のセミナーは、これまで本センターなどで行われてきた生態系研究に関する情報を共有し、今後の展望や課題について議論する機会にしようと企画したものです。海洋学部や海洋研究所の教員をはじめ海洋学の研究者、行政関係者ら約40名が参加しました。

当日は、山田吉彦所長(静岡キャンパス長、海洋学部教授)が、「本センターのスタッフも一新し、再出発するにあたって、さまざまな知見からご意見をいただければとセミナーを企画しました。活発な意見交換を期待しています」とあいさつ。続いて、海洋学部環境社会学科の石川智士教授がセミナーの趣旨を説明し、「石垣・西表の海洋環境や生態系の研究は活発に行われていますが、横の連携や地元への還元に課題があります。本セミナーで自然や生態系に関する研究を披露していただくとともに、活用案を議論することで共通認識を醸成し、次のステップへと進めていきたい」と語りました。研究発表では、「西表島および石垣島におけるウミショウブ群落の遺伝的特性」について野原健司准教授(海洋学部海洋生物学科)が、「西表島におけるサンゴの新規加入」について中村雅子准教授(海洋学部水産学科)が発表するなど、本学をはじめとした計7名の研究者が西表島周辺における調査研究の成果を紹介しました。

最後に石川教授が、「生物多様性を守るためには、生態系や文化などさまざまなバランスをとることが大切です。我々研究者は科学的知識を種の保全に役立てようと取り組んでいますが、その土地にある生活や文化が失われては意味がないということを認識しなければならないと強く感じました。今回で終わりにするのではなく、毎年のように研究報告をしていきたい」とまとめました。

当日のプログラムは下記のとおりです。

開会の挨拶 山田吉彦所長
セミナーの趣旨説明 石川智士教授
・研究発表
「西表島のマングローブ域に棲む魚類-どんなふうに棲んでいるのか?-」 南條楠土氏(水産大学校)
「西表島におけるオカヤドカリ類の貝殻利用と幼生放出」 土井航氏(鹿児島大学)
「西表島および石垣島におけるウミショウブ群落の遺伝的特性」 野原健司准教授(海洋学部海洋生物学科)
「西表島におけるサンゴの新規加入」 中村雅子准教授(海洋学部水産学科)
「海底底質に残る陸域負荷がサンゴの生息環境に及ぼす影響」 安元純氏(琉球大学・総合地球環境研究所)
「自然と人をつなぐ生物文化──オカヤドカリ/葬」 当山昌直氏(沖縄生物学会・総合地球環境学研究所)
「生物文化多様性の知恵を学ぶ、結ぶ、そしてひらく」 高橋そよ氏(琉球大学・総合地球環境学研究所)
・総合討論
「今後の研究テーマと協力体制」「研究成果の地元還元と世界発信」など
コメンテーター:安渓遊地氏(総合地球環境学研究所・山口県立大学)
閉会の挨拶とセミナーのまとめ 石川智士教授