新規担癌ヒト化マウスモデルを用いた新たな抗がん剤候補の作用の解明(医薬総合研究部門・椎名隆教授・亀谷美恵客員准教授)

がんは今や国民の半数が生涯で一度は罹患する病気で死亡率も高く、多くの研究者がより優れた抗がん剤開発を目指しています。近年、抗体医薬の有効性が明らかになりましたが、抗体医薬の更なる開発にはヒトを完全に模倣するモデル動物が必要です。医薬総合研究部門の椎名教授・亀谷客員准教授らのグループは、がんという病気と妊娠が、ともに大変よく似た組織(腫瘍組織と胎盤)を持つが、妊娠は胎盤の増殖をコントロールし、最終的に排出することに着目し、妊娠関連分子に抗がん作用がある可能性を研究してきました。また、同時に担癌ヒト化マウスを開発し、新たな抗がん剤の候補を開発し、Frontiers in Immunology誌に論文(http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fimmu.2023.1173728/full?&utm_source=Email_to_authors_&utm_medium=Email&utm_content=T1_11.5e1_author&utm_campaign=Email_publication&field=&journalName=Frontiers_in_Immunology&id=1173728)を発表しました。

この論文では、ヒト末梢血の免疫環境をもつ担癌マウスを開発し、これを用いて、妊娠関連ホルモンであるプロゲステロンを内包するリポソームと結合した抗体医薬に、体に優しい抗がん作用があることを明らかにしています。