文化社会学部北欧学科と建築都市学部では10月4日に湘南キャンパスで、知のコスモス「映画『アアルト』から見る同時代に生きた建築家・山田守と東海大学の建築」を開催しました。『アアルト』はフィンランド人監督のヴィルピ・ス―タリ氏によって2020年にフィンランドで公開された映画で、フィンランドの著名な建築家アルヴァ・アアルトを妻であるアイノ・アアルトとの関係性から描いた話題作です。映画はアルヴァ生誕125周年、アイノ生誕130周年という記念の年に当たる2023年10月より日本で公開されるもの。今回の「知のコスモス」は、映画の日本公開を記念したもので、当日は上映会とスータリ監督によるティーチインイベントを実施。それに先立ち午前中には、アアルトと同じ時代を生きた建築家・山田守が手がけたキャンパス内の建築物を回るツアーも行いました。
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山田守のキャンパス建築ツアーでは、国立近現代建築資料館の主任建築資料調査官を務める大宮司勝弘さん(本学連合大学院理工学研究科総合理工学専攻建築土木コース博士課程修了)がガイドを務め、教職員や北欧学科の学生が参加しました。大宮司さんは、「建築物には、1920年ごろからコンクリートが使われるようになり、造形の自由さが生まれました。世界中で直線的な構成で合理性を求めるモダニズム建築が広まる中、曲面を多用するアアルトと山田守は建築家として近いのではないかと考えています」と説明。「普段、ここで授業を受け、日常を送っている学生さんたちは、なかなか気づかないことも多いかもしれません」と語りかけ、2号館、3号館、それを背景にした山田守の胸像、松前会館、1号館を歩きながら細かなこだわりや特徴を紹介しました。参加した中川綾香さん(北欧学科3年次生)は、「あらためて建物一つひとつの細部に目を向け、曲線部などのこだわりを知りました。北欧のデザインや建築を広く学ぶことはありましたが、こうして人物に寄り添い、深く勉強する楽しさを感じました」と話していました。
続いて2号館で開催された上映会とティーチインイベントには、学外からも建築やアアルトに関心を持つ多くの参加者が集まりました。映画に続き、スータリ監督、建築都市学部の渡邉研司教授、北欧学科の柴山由理子講師が登壇。スータリ監督はアアルトの建築に親しんで過ごした幼少期の思い出や、アアルト夫妻の書簡のやり取りを通じてアイノの役割の大きさを知ったことなど、映画を撮った経緯や苦労した点などを語り、「アアルトと同じ空気を吸っていた山田守氏のモダニズム建築の中で映画を上映できてうれしい。アアルトはフィンランド人なら誰でも一家言持っている英雄。その人間性をぜひ感じてください」と話しました。柴山講師は、アアルトの孫ヘイッキ・アアルト=アラネンによる『アイノとアルヴァ アアルト書簡集』(草思社)の翻訳を本学の卒業生、上山美保子さんが手がけたことを紹介。渡邉教授は、「アアルトは人間と建築との関係をあらためて意識した建築家。森林資源の活用についても、日本の建築はフィンランドから学ぶことが多くあると思っています」と話しました。
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続いて山田守建築ツアーのガイドを務めた大宮司氏が登壇。山田が手がけた数々の建築について写真を交えて解説し、「くしくも山田夫妻の往復書簡も多く残っています。山田の建築作品の最後の集大成がこの湘南キャンパスです」と話しました。参加した東郷毅紀さん(大学院工学研究科1年次生)は、「アアルトは機能性を重視した建築家だと思っていましたが、映画を見て、人々の快適性といったヒューマンスケールや自然をうまく取り入れているのだと感じました。他学部他学科とのコラボ企画は、普段の学びとは違う視点を得られるので面白い」と語りました。
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柴山講師は、「フィンランドでアアルトの建築に触れ、東海大学に赴任して山田の建築を間のあたりにして漠然とその共通性を感じてきました。それが、映画の日本公開が決まり、試写会に岩﨑克也教授(建築都市学部長)と山田の孫にあたる写真家の山田新治郎氏をお誘いした折に、アアルトと山田が建築の国際会議で同席していたことを知り驚きました。2人がモダニズムを志向しながらも自然や人間に寄り添う建築物を手がけてきた類似性に気づき、この観点を深めていければと昨年度、岩﨑先生、渡邉先生と一緒に冊子を作るなど研究してきたことが本学での上映会へとつながりました。これを機に2つの国のモダニズム建築について考え、総合大学の魅力と実行職を駆使して山田守建築の価値を再認識し、今後の活用につなげていけたらと夢が広がります」と話しています。
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