総合科学技術研究所が「東海大学‐サセックス大学‐ブライトン大学 カーボンニュートラル技術ワークショップ」を開催しました

総合科学技術研究所では5月28日に、湘南キャンパスで「東海大学‐サセックス大学‐ブライトン大学 カーボンニュートラル技術ワークショップ」を開催しました。本研究所の野原徹雄研究員が国際会議をきっかけに研究交流を重ねてきたイギリス・サセックス大学工学部教授のシリル・クルア氏らと本研究所所属の研究者がカーボンニュートラル技術に関する最新の知見を発表することでさらなる連携を図るとともに、学生や大学院生の知見を深め、研究へのモチベーション向上につなげることなどを目的としています。

当日は、学生や大学院生、教職員、本学教員と共同研究に取り組む企業の関係者ら約40名が参加。初めに本研究所の岩森暁所長があいさつし、ワークショップの趣旨を説明しました。続いて本研究所のセルゲイ・クリニッチ教授が、「光触媒およびガスセンシングのための液中レーザー照射によって作製されたナノ材料」のテーマで、液体の中で材料にレーザー光を照射して微細なナノ粒子に加工・合成する液中レーザーアブレーション(LAL)やその微細粒子の応用について紹介。パルスレーザーを水中で照射してナノ材料をガスセンターとして応用する技術について説明しました。また、クルア氏は、「超臨界流体混合:最新動向と液体燃料および水素貯蔵への応用」について講演。航空機で使用される液体燃料燃焼システムや大型貨物車向けの新しい液体水素貯蔵ソリューションへの活用が期待される超臨界流体の混合に関連して、極限環境下で微小滴を高速長距離顕微鏡観察し、圧力-温度の縮約相関を用いて混合領域の物理的理解を分類する方法を紹介しました。

ブライトン大学応用科学部教授のピーター・J・クラッグ氏は、「計算化学による分子機構の解明:CO₂回収への応用」と題し、1950年代に小さな分子の構造や電子密度を予測するための基本的な数学モデルとして始まった計算化学手法をはじめ、複雑な流体や多成分金属有機構造体(MOF)によるガス吸着、生体膜タンパク質の挙動など、幅広い分子レベルの現象をシミュレーションの手法を解説。実験結果の予測や説明への活用法を語りました。最後に登壇した本研究所の橋田昌樹教授は、「レーザーパルス照射による固体材料上のナノ構造形成」をテーマに、シリコン太陽電池上に、短パルスのレーザーを照射して2次元的に配列したナノドット構造を生成する技術を解説。ナノ秒およびフェムト秒レーザーパルスを用いた固体材料上のナノドット構造に関する最新の研究成果を披露しました。

それぞれの発表後には質疑応答も行い、本学教員をはじめ学生や大学院生も積極的に質問を投げかけ、熱心に議論を交わしました。司会進行を担当した野原研究員は、「カーボンニュートラル技術をテーマとしましたが、太陽光発電用レーザー技術をはじめ水素燃料やSAF(持続可能な航空燃料)用の減圧沸騰/遷臨界型分岐技術、CO2吸収回収システム用のCO2吸収液生成技術まで多様な内容の発表があり、各分野における最先端技術の数々は、多く学内の参加者はもちろん学外からご参加いただいた企業の方々にも大変有用な内容だったと思います。6月には本学から私自身を含めCO2吸収回収システムの研究者4名がサセックス大とブライトン大を訪問するので、本ワークショップのテーマとした『カーボンニュートラル技術』について日英連携で推進していきたいと考えています」とコメント。岩森所長は、「総科研として国際連携研究を積極的に進めており、クリル先生の研究室との連携は総科研および本学におけるカーボンニュートラル研究のプレゼンスを高める上でも重要と考えています。今回のワークショップは、今後さらに組織的かつ積極的な交流を進めていく第一歩となりました」と話しています。