東海大学マイクロ・ナノ啓発会【Tμne】第15回学術講演会を2月29日に、湘南キャンパスで開催しました。総合大学のメリットを生かした研究の情報交換やコラボレーションを目指し、マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)に所属する教員が中心となって開いているものです。第15回となる今回は、今年度本学で発足した「特定助教・特定助手制度」をテーマに取り上げ、博士人材のキャリアパスに関する相互理解を図ることを目的に、理学部や工学部、医学部、生物学部の学生や大学院生、教員をはじめ、大阪大学や三重大学の学生、教員ら約120名が参加しました。
開会にあたり、世話人代表を務めた岡村陽介教授(MNTC、工学部応用化学科兼任)が開催の趣旨や企画の意図を説明し、「多様な分野の研究室が一堂に会して日ごろの研究成果を発表できるのが【Tμne】の持ち味です。この機会にぜひ活発にディスカッションし、学内連携や共同研究につなげてください」とあいさつ。続いて稲津敏行副学長(理系担当)が、「発足から10年、機器開発プロジェクトを機に参集した当時の若手研究者たちから会の名称について『“マイクロ・ナノ”なら分野を問わず多様な研究者が関われる』と由来を聞いたことを思い出します。若い人たちにはぜひこの機会に新たな研究のタネをつかんでもらい、次の集団を形成するようなマグマが動き出す会にしてください」と話しました。
前半の招待講演では、まず大学院総合理工学研究科の新屋敷直木研究科長(理学部物理学科教授)が登壇。「総合理工学研究科:特定助教・助手をはじめとする博士課程の仕組み」をテーマに、本学大学院の博士課程の概要や、日本学術振興会特別研究員、本学大学院研究奨励奨学金、さらに本学独自の特定助教・特定助手などキャリア支援に対するサポート体制の諸制度について解説しました。また、URA(University Research Administrator)の荒砂茜講師(MNTC兼任)が登壇し、「新たな時代に求められる博士人材」をテーマに講演。大学の研究力強化を担うURAについて、情報に基づく研究戦略の策定をはじめとする多岐にわたる業務内容について解説するとともに、自身のキャリアを振り返りながら、求められる博士人材の重要性や未来について話しました。
続いて、大阪大学教授の樺山一哉氏が司会進行を務め、4名の特定助教・助手がそれぞれ手がけている研究について発表。その後、木村啓志教授(MNTC、工学部生物工学科兼任)を座長にパネルディスカッションを実施し、「自分にとって研究とは」「在学中に良かった経験」「キャリアプラン」などについて活発な意見交換が繰り広げられました。会場からは「1日の生活時間の割り振り」や「研究に行き詰ったときの発想の転換方法」などについて質問があり、4名は自身の経験を引きながら、「大学院進学を迷っているならぜひ進んでほしい」「ぜひ英語力を磨いておいてほしい」「やりたい研究に対する覚悟をもって進学してほしい」などさまざまな立場からアドバイスを送りました。荒砂講師は、「やりたいことをやろうとすると必ずさまざまなライフイベントが発生します。創意工夫しながらフレキシブルに可能性を考えてほしい」とコメント。新屋敷研究科長は、「我々は自由になるために時間を費やしている。自分のやりたいことをやる自由を確保するために今、何をするのか、ポテンシャルを上げる努力を重ねてほしいと思います」と語りました。
後半は19号館1階で、各研究室で展開されている研究内容のポスターセッションを実施。74件のポスターを前に、学生や大学院生、教員らが活発に議論する様子が見られました。最後に、医学部の秦野伸二教授(医学科)の発声で乾杯して情報交換会を開始。和やかな雰囲気の中、参加者の投票をもとに選ばれた10名に対し、MNTCの喜多理王所長から優秀ポスター賞が授与されました。最後に喜多所長は、関係者や講演者らに謝辞を述べ、参加した学生や大学院生らに向けて、「若い皆さんの研究に対する奮闘を支えていきたい。次世代育成のために私たちは果たすべき役割を担うので、皆さんも頑張ってほしい」とエールを送りました。
◆特定助教・特定助手による発表は以下のとおりです。
「アロステリック低分子触媒による細胞内酸化還元ホメオスタシス制御」三神瑠美(先進生命科学研究所)
「ポリピロール-ITO のハイブリッド合成と匂いセンサへの応用」次田将大(マイクロ・ナノ研究開発センター)
「超原子価有機テルル化合物を用いた新規反応の開発」澁谷優我(先進生命科学研究所)
「線形燃焼室で伝播するデトネーション波詳細構造に関する研究」王発明(総合科学技術研究所)
◆優秀ポスター賞の受賞者は以下のとおりです。
田中 海(東海大学大学院生物学研究科生物学専攻)
真島 昇平(東海大学大学院工学研究科応用理化学専攻)
危 一(東海大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻)
荒井 祐嘉(東海大学大学院理学研究科物理学専攻)
諏訪 麟太郎(東海大学大学院工学研究科応用理化学専攻)
藤村 勇輔(東海大学工学部応用化学科)
八木 原風(三重大学大学院生物資源学研究科)
江川 菜々(東海大学工学部生命科学科)
宮川 侑人(東海大学生物学部海洋生物科学科)
須田 さくら(東海大学大学院生物学研究科生物学専攻)