教職資格センターが小田原市と文化財保存に関する連携を開始しました

教職資格センターがこのほど、神奈川県小田原市との文化財の保存に関する連携を開始しました。本センターでは、2014年度からユニバーサルミュージアム(誰もが楽しめる博物館)の推進に向けて、松前記念館と連携しながら「彫刻を触る☆体験ツアー」を開始。学芸員を目指す学生らが参加し、湘南キャンパス内にあるブロンズ像の清掃をはじめ、地域貢献活動として秦野市や藤沢市、東京都北区などでも屋外彫刻のメンテナンスに取り組んでいます。今回は、小田原市でおだわら市民学校への協力に加えて、毎年湘南キャンパスで開催してきた公開シンポジウムを開催しました。

12月4日には、小田原市生涯学習センターけやきと小田原市庁舎前庭で「彫刻にふれる~野外彫刻鑑賞(手にふれる鑑賞)とメンテナンス体験~」を実施。小田原市で2018年度に立ち上げられた「おだわら市民学校」の専門分野「地域の文化力を高める」の一環で、彫刻メンテナンス活動を通して小田原の歴史や文化などについて学びを深めることを目的にしたものです。当日は、初めに小田原市生涯学習センターけやきで、広瀬浩二郎氏(国立民族学博物館准教授)や秦野市文化振興課文化交流担当主事補の福島宏氏、秦野市内の市民団体「彫刻愛し隊」のメンバーが彫刻メンテナンスの取り組みを報告しながら、彫刻に触れることの重要性について講義しました。また、本学からは教職資格センターの篠原聰准教授が参加し、これまでの彫刻メンテナンスの活動や今後の展開を紹介しました。午後からは、小田原市庁舎前庭に移動し、ブロンズ彫刻の保存修復を手掛けている高嶋直人氏(野外彫刻調査保存研究会)の指導のもと屋外彫刻の洗浄やワックスを塗って磨く作業を体験しました。小田原市役所文化部文化政策課文化交流係の諸星正美氏は「東海大学と秦野市の連携事業を見学した際に、ぜひ小田原市民にも体験してほしいと思い、今回の実現につながりました。実際に洗浄や磨く作業を行ったことで、市民から“想像以上に充実した体験だった”という声が聞かれました。自分たちが暮らしている街にある屋外彫刻の現状や課題を知ってもらう機会にもなりました」と語りました。

12月5日には、小田原駅に隣接した複合商業施設ミナカ小田原内のおだわらイノベーションラボをメイン会場にWEBビデオ会議システム「Zoom」を併用して、公開シンポジウム「彫刻を触る時間~鑑賞の能動性が拓く屋外彫刻の未来~」を開催。屋外彫刻を保存して後世に伝えるために必要な要素や活動を議論することを目的としたもので、学生や研究者ら約50名が参加しました。開催にあたり本センターの朝倉徹所長が開会のあいさつし、「芸術は人々の生活や価値観に大きな変化を与えてくれるものだと思いまます。貴重な芸術作品である屋外彫刻をどのように後世に残していくかについて、それぞれの立場や視点から意見交換ができることを楽しみにしています」と期待を語りました。シンポジウムでは、小田原市と秦野市の職員が彫刻のあるまちづくりやメンテナンスの取り組みなどについて報告。続いて、大分県大分市の事例を田中修二氏(大分大学教育学部教授)が、東京都北区の事例を宮坂慎司氏(筑波大学芸術系助教)が紹介。また、広瀬氏と黒川弘毅氏(武蔵野美術大学造形学部彫刻学科教授)が彫刻を触ることとメンテナンスの意義について講演しました。最後に、篠原准教授がこれまで取り組んできた彫刻メンテンナス活動を紹介した後、ディスカッションを実施。市民の主体性を確保する方法について各々の立場から意見し、大学や市だけでなく、市民への引き継ぎの重要性などを議論しました。篠原准教授は、「これまでの市や区との連携事業に注目いただき、小田原市とも活動を展開することができました。また、昨年度にコロナ禍で中止となったシンポジウムも開催し、来年度に向けた課題や企画案を模索できてよかった」と話しました。