東海大学教育開発研究センターでは学長室教育支援担当協力のもと9月8日に、第8回教育開発フォーラム授業研究会「生成系AIの教育利用における現状と課題―ChatGPTを中心に―」を開催しました。昨今、ChatGPTをはじめとする生成系AIに関する話題が大きな関心を集めており、教育・研究分野でもレポートや論文への利用などで影響を受けることが考えられます。そこで本センターでは、生成系AIとは何かといった基本的な問いから現状と今後の課題について議論しようとフォーラムのテーマに設定。オンラインで約110名が参加しました。
当日は、初めに梶井龍太郎学長代理が、「すでに実際の授業で活用している先生方もいらっしゃると思いますので、事例を共有し、さまざまな討議をしていきたい」と期待を寄せました。続いて本センターの及川義道所長が、「生成系AIの教育利用の現状」と題して講演。世界各国のChatGPTに対する方針や対応、企業や大学での利用状況などを分析し、「教育に活用するためには利用上のリスクや学びのうえでプラスになる使い方などについて学生とよく話し合い、共通の認識を持つ必要があります。今後、生成系AIを現在の能力を拡張する一つのツールとしてうまく利用し、問題解決につなげる力が必要になるのではないでしょうか」と語りかけました。「学生には使用を許可したほうがよいでしょうか?」との問いには、「すでに日本ではさまざまな場面で生成系AIを使用する方向に動いています。禁止してこれらのツールを扱えない学生を育てるデメリットより、正しく使える学生を育てるほうがよいのでは」と答えました。
その後は、情報理工学部情報科学科の木下裕磨講師が「生成系AIの基礎と研究動向」と題して、言語生成や画像生成の仕組みのほか、言語だけでなく画像や音、データなど複数の種類のデータ生成、日本語入力への応答性能改善といった研究が進められている現状を解説。健康学部健康マネジメント学科の安田純講師は「授業レポート評価およびゼミ活動におけるAIの活用」をテーマに、学生からの提出データを集計・分析するプログラムコードをAIに出力させた事例や、用途に合わせた複数の生成系AIの使い分け方を紹介しました。語学教育センターの豊嶋裕子教授は「中国語検定教材作成におけるChatGPT-3.5、Bingチャットの利用例」について、ChatGPTとBingに中国語検定の問題を回答させた結果や教材作成への活用について語りました。続いて、本センターの宮川幹平次長代行が「東海大学全学学生アンケート調査結果報告」を行い、「有効回答数は2626件、ChatGPTの認知度は93.9%とかなり高く、利用経験者は回答者全体の39.8%でした。なお、大学の授業におけるレポートやそのほかの提出物作成にも利用したことがあると回答したのは利用経験者の43.3%、ただ、回答をそのまま用いた学生は少数派です。新しい情報や知識の獲得、学習時間短縮や効率化実現にその価値を見出している傾向がありました」と説明し、「生成系AIについて大学で学ぶ、知る、考える機会をつくってほしい」といった声が多かった点も紹介しました。
第2部では、本センターの園田由紀子講師の司会進行で、参加者も交えたディスカッションを実施。実際に使用してみた感想や疑問点、生成系AIをレポートや課題作成に勧めるケースと禁じるケースについて語り合い、グループに分かれて自身の経験を報告しながら議論を深めました。最後に宮川次長代理が、「生成系AIの活用については一言で解決できるものではなく、日々学び続けていくものだと思います。異なる分野の教員にとっても共通の話題としてポジティブに協力しながら、本学の授業を考えていくきっかけになれば」とまとめました。