医学部・阿部幸一郎准教授らの慢性再発性多発性骨髄炎の原因遺伝子同定に関する研究成果がアメリカの論文誌『PNAS』オンライン版に掲載されました

2019年06月13日

医学部医学科の阿部幸一郎准教授(基礎医学系分子生命科学)と北里大学理学部生物科学科の高松信彦教授、ドイツ・ヘルムホルツセンターミュンヘン実験遺伝学研究所、アメリカ・アイオワ大学医学部らの国際共同研究グループが、自己炎症性骨疾患である指定難病の慢性再発性多発性骨髄炎(chronic recurrent multifocal osteomyelitis=CRMO)の原因となる遺伝子として、がん遺伝子Srcの類縁遺伝子であるFgr(主に骨髄球やリンパ球を増殖させる細胞内シグナルの伝達にかかわる遺伝子。マウスはFgr、ヒトはFGRと表記)を同定。5月27日に、アメリカの論文誌『PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)』に掲載されました。

CRMOは骨髄の炎症と周囲の骨破壊により手足の骨に慢性的な痛みを引き起こす炎症性疾患です。感染症や腫瘍といった特定の要因によらないことが特徴で、原因遺伝子の同定が待たれていました。阿部准教授らは、CRMOと類似した病態を持つ変異マウス(Ali18 マウス)を解析し、原因となるFgr遺伝子の変異を同定。Ali18 マウスのFgrをゲノム編集技術により欠損させると、炎症と骨破壊が消失することを明らかにしました。また、Ali18で見つかった変異を持つFgrタンパク質で、キナーゼ活性(リン酸化酵素活性)の調節異常があることを発見しました。ヒトにおいても、アイオワ大学医学部で調査したCRMO 患者の約13%に FGRのエクソン領域における非常に稀な遺伝子多型が発見されたことから、FGRの変異がCRMOの原因である可能性を見出し、さらに、Ali18 マウスと同様に、CRMO患者から見つかった変異を持つFGRタンパク質でも、キナーゼ活性が異常になるという共通点も突き止めました。

阿部准教授は、「ドイツ留学中から継続していた変異マウスに関する研究がアイオワ大学の研究者に注目されたことで共同研究が始まり、CRMOの原因遺伝子の同定につながりました。この成果により、CRMOの遺伝子診断の実現や、Ali18 マウスを用いた治療薬の探索も可能になると考えています。今後の課題は、CRMO 患者で見つかったFGRの変異が、マウスにおいてもCRMO と同様の自己炎症を引き起こすかを明らかすることです。同じ症状が検出されれば、Ali18 マウスはよりヒトに近い疾患モデルとして、さらに多くの利用法が期待できます。本学科整形外科学の研究者とも連携し、臨床応用に向けて研究を進展させたい」と話しています。

『PNAS』に掲載された記事はこちらからご覧ください。
https://www.pnas.org/content/116/24

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