建築都市学部オープニングセミナー「建築を動かすイメージとワード」を開催しました

建築都市学部では7月23日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「建築を動かすイメージとワード」を開催しました。今年4月に開設した建築都市学部の理念や教育・研究活動を周知するとともに、建築にまつわる企業や行政、大学などの研究機関の識者らとそのあり方を考える機会とすることを目的としたものです。「Linkage 人・建築・都市を○○でつなぐ」を共通テーマとして昨年度から23年度まで合計9回の講演を企画しており、第6回目となる今回は建築ジャーナリストの磯達雄氏(Office Bunga)が講師を務め、「建築を動かすイメージとワード」をテーマに実施しました。

専門家向けに建築に関する総合的な情報を提供する『日経アーキテクチュア』編集部で編集者を務め、独立後は建築ジャーナリストとして雑誌連載や書籍の執筆、編集を手掛けてきた磯氏は、メディアを介して建築にかかわってきた経緯から、講演ではまずメディアの構成要素や、言葉、イメージと建築の関係を解説。日経アーキテクチュアで手掛けてきた、新しく建てられた建築物を紹介するコーナーにおける、写真撮影の指示やページ構成の立案、設計者へのインタビューと原稿作成のポイントを語るとともに、1970年の大阪万博について振り返る特集「フラッシュバック大阪万博」など担当してきた特集記事も示しながら、「新しい建築物を紹介する際の掲載順や、記事のボリュームなど記事の掲載され方で、読者が編集者の意図以外のものを汲み取ってしまい、その建築が持つ意味が読者に誤って伝わる場合もあり得ます。建築雑誌には、建築物を客観的に伝えようとする中で読者に『建物の見方』を教えてしまっているケースが見受けられる」と指摘。さらに、近代建築史を巡る書籍や、雑誌上で起こってきた建築に関する論争、建築雑誌に使われる写真のパターンなどさまざまな例を示しながら、「建築をイメージさせる言葉は、建築自体の代替物として機能するものです。またこれらは、建築から由来したものであるにもかかわらず、逆に建築を規定しており、建築デザインの潮流に大きな影響を与えてきました」とまとめました。

岩﨑克也学部長の進行による質疑応答では、「リポートやプレゼンの際に、限られた文字数でうまく伝えるコツ」や「設計を説明する際の言葉の紡ぎ方」、「建築家への取材時の注意点」など多岐にわたる質問が寄せられ、磯氏は具体的な例を挙げながら回答。最後に学生たちに向けて、「私は大学の工学部建築学科出身ですが、建築雑誌の仕事に就いたことで、資料を読み、建築家に会う中で急速に勉強しました。今になってちゃんと勉強しておけばよかったと思うことも少なくありません。学生の皆さんも、建築についてわからないこともあるでしょうが、勉強すればするほどわかるようになり、加速度的にどんどん面白くなるものです。少しずつでいいので、面白がって建築に向き合ってください」とメッセージを送りました。