【おしえてセンセイ 3】Q.安全に自転車を使うにはどうしたらいい?

A.交差点では「危険を見落してないかな」と注意しながら、ゆっくり走りましょう

建築都市学部土木工学科 鈴木美緒先生

 交通事故のニュースは毎日のように報じられています。一見すると増えたように思う人もいるかもしれませんね。ところが昨年2025年は1948年の記録を塗り替え、最小事故数となったのです。そんななか、交通事故全体の約3割を占めているのはなんでしょうか? 実は、自転車の交通事故なのです。

最も多いのは、曲がり角などの車や人から見えない場所や歩道からの急な飛び出しによる、見落としから起こる接触事故です。事故にならずとも、ヒヤッとした経験がある方もいるのではないでしょうか。

人は「認知・判断・操作」の3つで動いています。その中での事故の主因は「認知・判断」のミスです。見てから判断するのは一瞬ですが、イヤホンで音楽を聴いたり、スマホで片手が塞がったりすると、タイムラグが生じて判断ミスが起こりやすくなります。

そんなことを受けて、2026年4月から運転中のイヤホンやスマホの取り締まりが厳しくなりました。そのほかにも、自動車と同じく左側通行をしたり、交差点でしっかり減速することが求められるようになっています。今は努力義務のヘルメットも、着用で致死・重傷リスクを下げられるため、ぜひ使ってほしいですね。特に交差点ではスピードを出さず、ゆっくり走ることを心がければ問題ないでしょう。

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ただ私たちの研究室では、そうした個人の努力だけに頼らず、道路標示や道路の作り方を工夫して事故を防ぐ研究に取り組んでいます。心理学なども応用しながら、道路や歩道表面にトリックアートを置いたり、蓄光素材を用いて人と自転車を別々に誘導したりして、人や自転車を自然と誘導するのです。神奈川県鎌倉市で蓄光素材を用いた歩道誘導を行ったところ、子ども達が喜んでその上を歩いてくれるようになり、歩道で自転車との行動分離ができるといった成果も上がっています。こうした研究結果を踏まえ、今年4月からの道路ルール改正に向け、より道路標示やルールをわかりやすく可視化する取り組みも行っています。

 土木工学というと建設現場に目を向けられがちかもしれません。でも実際は、交通事故から満員電車の緩和まで、日々の生活で遭遇する危険や不便を解消するのも土木の役割なのです。水道、電気などの当たり前のインフラを安全・安心に支えるまちづくりも含めながら、心理学や行動科学なども組み合わせて人々の生活に直結した課題を解決する珍しい理系分野でもあります。いま進路に迷っている人なら、その分やりたいことが見つけやすい多様さも魅力です。社会や環境の変化に合わせて、柔軟により良いまちを作っていく土木の分野に一度触れてみませんか。


すずき・みお 1977年東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業後、東京工業大学大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻博士後期課程修了。博士(工学)。財団法人運輸政策研究機構運輸政策研究所研究員などを経て、2018年4月より現職。専門は交通工学、交通計画など。15年には『文藝春秋』3月号掲載の「日本を代表する女性120人」に選ばれている。

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