建築都市学部では5月21日に湘南キャンパスで、建築家・宮崎浩氏とクリエイティブディレクター・宮崎桂氏による講演会「敷地を読み取りランドスケープ・建築の地平を拓く」を開催しました。学生・大学院生を中心に約350名が参加し、会場に入りきれない学生のために外部のモニターでも同時中継しました。宮崎浩氏は建築家・槇文彦氏の事務所を経て1989年に株式会社プランツアソシエイツを設立。中原中也記念館(山口県、1994年)で日本建築家協会新人賞を受賞し、大河原公園(宮城県、96年)、新山口駅北口駅前広場(2018年、都市景観大賞、公共建築賞など)、長野県立美術館(21年、日本建築学会賞、公共建築賞など)といった建築と周辺環境を融合させた多様な作品で知られる現代の日本を代表する建築家のひとりです。



講演では、初期から近年の主要プロジェクトまで、豊富な画像や概念図を用いて解説。特に新山口駅北口駅前広場と長野県立美術館について、周辺のランドスケープや社会の状況まで読み込んで提案する自身の姿勢に触れながら詳細に説明しました。「実際の現場も、皆さんがグループで課題を検討したり図面を引いたり模型を作ったりする工程と変わりありません。建築家の職能として大事なのは、そうした構想を1/1スケールで“使える空間”に落とし込む力です。多くの難問や壁にぶつかっても、ダメ元で挑戦する気概をぜひ今から養ってください」と話しました。



続いて講演した宮崎桂氏は、テキスタイルデザイナー・粟辻博氏の事務所やプランツアソシエイツを経て株式会社KMDを設立。中原中也記念館、長野県立美術館、新山口駅北口駅前広場、横浜市庁舎、電通本社ビルなどのサインデザインや中部国際空港の色彩計画などを手掛け、日本サインデザイン賞大賞、経済産業大臣賞、GOOD DESIGN AWARD、 Red Dot Design Award(ドイツ)、IIID Award(オーストリア)などを受賞している日本におけるサインデザインの第一人者です。
講演では自身の多彩なプロジェクトを紹介し、特にパートナーでもある浩氏が設計した新山口駅北口駅前広場と長野県立美術館のサイン計画について丁寧に解説。新山口駅のタクシー乗り場やバス乗り場に原寸大近い乗り物のシルエットを大胆に使った例などを豊富な画像で披露。山口出身である詩人の中原中也や俳人の種田山頭火らの作品をちりばめたサイン計画について説明しました。長野県立美術館について、名称変更に伴う新たなサイン計画で同館と深いゆかりがある東山魁夷が好んで描いた水面に映る木立をモチーフにしたロゴデザインや、シンプルなサイン計画について解説。「その建築が建つ場所には必ず物語のようなものがあり、それを掬い取って紡ぎデザインに仕立て、場の空気をつくるのが私の仕事です」と話しました。



後半は学部長の岩﨑克也教授と両氏が対談し、学生からの質問にも丁寧に答えました。浩氏は最後に学生に向けて、「発注者が気付いていないものを探し出すのが建築家の仕事のひとつ。その上で、関わり合う多くの人たちの思いを最終的に一つの建築に仕立てるためにプレゼンテーションの力を磨くとともに人を動かす対話力を養ってください」とエールを送りました。
熱心に聴講していた小林朔也さん(3年次生)は、「細部までこだわってこそコンペティションを勝ち抜くことができるのだと実感しました。そのような力を養う努力を続けます」と話しました。卒業設計に取り組んでいる倉下瑞希さん(4年次生)は、「設計だけではなくランドスケープや構造設計、サイン計画など多様な才能や要素をまとめ上げて一つのものを作り上げる大切さを改めて実感しました。自分の卒業設計について、場所や地域性を読み取って考えたいと思います」と話しました。


