【おしえてセンセイ! 06】Q. なぜ居心地のいい場所と悪い場所があるの?

A.「安心」が一つのキーワードです

私たちが普段、生活したり行き来したりしている場所には、居心地がいいと感じるところがある反面、なんとなく居心地が悪いところもありますよね。

そう感じる理由には、光や音、温度や湿度、風通しなど、様々な要因が考えられます。「勉強や仕事に没頭したい」「おしゃべりを楽しみたい」「一人でのんびり過ごしたい」など、そこで何をしたいかによっても変わります。

居心地のよさ・悪さには、空間も大きく関係しています。人は広い空間の真ん中にポツンと立つよりも、壁際などのエッジ(端)に近い場所にいるほうが落ち着く傾向があります。自然の光や風を感じられる広大な広場も、空と人とを隔ててくれる屋根や天蓋のような構造があると、安心感や心地よさをより一層感じることができます。

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この「心地よさ」には、実は人間の普遍的な感覚が影響しています。人がまだ狩猟民族だった時代は、高台のように、周りはよく見える一方で獲物からは身を隠せる場所で狩をしていました。「見通しはいいけれど、周囲からは見えにくい」という環境こそが、生存に有利かつ安心できる場所だったんですね。

私は現在、人の流れや集う傾向、滞留時間などのデータに基づいて空間を設計していく「アクティビティ・デザイン」の研究に力を入れています。人の動きと居場所との関係をデータ化して空間づくりにフィードバックできるため、使う人に寄り添った空間設計がしやすく、建築学的にも新しい。それがアクティビティ・デザインの特長です。この研究のために、ある大学内で不特定多数の学生が「どのテーブルのどのイスに何時間座っているか」を調べたところ、吹き抜けに面したカウンター席が一番人気でした。その席は窓越しに辺りが見渡せて、しかも周囲の視線はあまり気にせずにいられる場所、つまり「見通しはいいけれど、周囲からは見えにくい」場所だったのです。

空間設計や建築に興味がある人は、ぜひ自分の足でいろいろな場所を巡ってみてください。「なんだか心地よい」「どうも落ち着かない」と思ったところではスケッチしながらその理由を考えてみると、その空間に潜む作り手の「意図」が理解できるようになるのでオススメです。別に絵が上手でなくても構いません。手を動かしながら考察していく経験の積み重ねが、自分自身で「心地よく使える空間」を生み出す力になっていくはずです。


いわさき・かつや  1964年千葉県生まれ。東海大学工学部卒業後、東海大学工学研究科修士課程修了。一級建築士。株式会社日建設計 設計部長を経て、2020年に東海大学工学部建築学科に着任。2022年より現職。専門は、建築設計。