「日本建築学会大会」の「建築歴史・意匠部門」で3名が若手優秀発表賞を受賞しました

大学院工学研究科建築土木工学専攻2年次生の川嶋基一さんと阿部憧子さん、1年次生の久保田英莉さん(指導教員=小沢朝江教授・建築都市学部)がこのほど、「日本建築学会大会」の「建築歴史・意匠部門」で若手優秀発表賞を受賞しました。9月5日から8日まで開催された同学会で発表された研究成果が評価されたものです。

川嶋さんは「来日西洋人の記録にみる日光東照宮等の評価と視点」をテーマに発表しました。ドイツの建築家・ブルーノ・タウトが1930年代に訪れた日光東照宮を酷評した点に着目し、それ以前に訪問した西洋人の記録から視点と評価の特質を検証。日記や旅行記などが翻訳されている16名を対象に、「装飾・彩色」「職人の技巧」など7項目について肯定的な評価と否定的な評価の年代等の傾向を分析しました。「ブルーノ・タウトの評価によって、日本国内で“東照宮の建築は悪しきもの”になったと指摘されてきました。しかし今回の研究で、評価も捉え方も個人によって異なることを証明できました。ブルーノ・タウトの批判で近代建築に対する見方も変わったことから、その運動を推進する団体の印象操作に使われてしまった側面もあるのでは」とまとめました。

阿部さんは「昭和三陸津波における宮城県十五濱雄勝部落の復興計画―『理想的漁村』としての集落・住宅復興の実態」について発表。祖母の実家が宮城県松島町にあることから、東日本大震災で被害を受けた地域を学部生のころから連続して研究してきました。今回は東日本大震災の被害の検証と復興計画の基礎資料として多くの研究が進められてきた1933年の昭和三陸津波をテーマに設定しました。「完璧な復興を遂げた岩手県大槌町に目が行きがちで、宮城県についてはほとんど研究されていませんが、十五濱村雄勝は県内で被害が最も大きかったことから、単なる復興ではなく、これを機会と捉えて住宅や集落の積極的な改善が図られました。海と山に挟まれ平らな土地が少ないことから、集落の嵩上げのほか、高台への移転により計画的な集落復興を遂げました」と紹介しました。

久保田さんは「社寺境内における手水舎の成立と形式・配置の特質」をテーマに設定しました。「もともと社寺が好きで、水が神聖なものとして扱われているのが面白いと感じ、研究に着手しました」と振り返ります。国・県の指定・登録文化財を対象に、社寺境内における水に関わる建築69例を調べ、名称による機能や成立年代の相違、地域ごとの地形による水の調達方法が配置にも関わる点を調査し、まとめました。「初めての学会発表で受賞できて驚きました。これからも社寺をテーマに研究を続けていきたい」と話しています。