建築学科の須沢講師が「2022年度 第8回 住総研 博士論文賞」を受賞しました

建築都市学部建築学科の須沢栞講師がこのほど、「2022年度 第8回 住総研 博士論文賞」を受賞。7月7日に表彰式と記念講演会が行われ、オンラインで配信されました。同賞は、将来の「住生活の向上」に役立つ優れた博士論文を表彰するもので、須沢講師は、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程在学中に執筆した「複線型復興プロセスに向けた東日本大震災における遠隔地避難者への居住支援に関する研究」が評価されました。

本研究では、東日本大震災後に岩手県盛岡市に「遠隔地避難」した842世帯について分析。支援制度の状況を整理するとともに、「もりおか復興支援センター」の協力を得て、避難状況や居住動向、居住支援業務の内容と手法などを調査しました。論文では、被災者の意思を尊重しながら生活再建までの道筋が示された「複線型復興」を実現するために、多角的に実態と課題を解明。発災から9年が経過した時点で、沿岸に戻らず、盛岡市にとどまる世帯が全体の半数以上を占め、留まる世帯は障がい者や生活困窮者の割合が高いことを明らかにしたほか、当初は帰郷を念頭においていた居住支援も、2016年ごろから徐々に市内に留まる世帯の支援に移行し、平時の居住支援を担う福祉機関と連携した支援体制を明らかにしました。

須沢講師は、「東日本大震災で津波の被害を受けた沿岸地域の支援体制は確立されていますが、内陸部に避難している人数は自治体や国でも把握しきれておらず、情報を整理する必要があると感じたことから、岩手県庁や盛岡市役所、もりおか復興支援センターの職員の方にお話を伺い、研究を進めてきました」と背景を語ります。今後も盛岡市での研究を継続しながら、平成28年熊本地震の被害を受けた地域や、将来的に災害が起こる可能性の高い地域などの調査も進めていく予定で、「居住支援を担う団体は全国にありますが、災害時に誰が支援を担うかは定かではなく、横の連携も不足しているのが現状です。地域の実情に合わせた居住支援のあり方や体制を検討するため、今後も研究を続けていきます」と語りました。