東海大学では4月17日に東京都港区のNS虎ノ門ビルで、メディアセミナー「“リサイクルエネルギー”活用のススメ」を開催しました。建物で使用する電気エネルギーや化石燃料の多くはパソコンや照明などで使われた後に「熱エネルギー」に変換され、大部分は換気や冷房によって大気に放熱されています。建築都市学部建築学科の山川智教授は、これらの熱エネルギーを給湯や暖房に再利用する「リサイクルエネルギー」の活用を提唱しており、北海道・帯広厚生病院での実証実験の成果は国内外で高く評価されています。今回のセミナーはこれらの取り組みを広く知ってもらおうと企画したもので、一般紙や専門紙の記者ら12社14名が参加しました。
当日は、マスコミ各社の記者を前に山川教授がリサイクルエネルギーの定義やこれまでの研究成果を紹介。「エネルギーは目に見えませんが、消費後に消えてなくなるわけではありません。飲み終わったペットボトルをリサイクルするように、エネルギーも再利用すべきではないでしょうか」と語り、屋外へ放出されていた熱を「熱回収ヒートポンプ」で回収し、再利用する方法を解説しました。また、「2022年度(令和4年度)省エネ大賞」の「省エネルギーセンター会長賞」や米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が主催する「ASHRAE Technology Award 2024」で世界最優秀賞を受賞した帯広厚生病院での実証実験の例も紹介。24時間365日稼働し続けるCTやMRIなどの検査機器が発する熱や、冬季も冷房・冷却している手術室、厨房の冷蔵・冷凍庫などの排熱を熱回収ヒートポンプで温水に変換し、風呂やシャワー、厨房の給湯、病室の暖房などに活用している様子も説明しました。また、温室効果ガスの増減の推移のほか、太陽光発電やメガソーラーの設置推移なども解説し、化石燃料、再生可能エネルギーに次ぐ第3のエネルギーとして、リサイクルエネルギーへの期待を語りました。
質疑応答では、「インターネットサーバ等の発熱が大きいデータセンターに向いているのでは?」「病院のように同じ建物内で活用できない場合、リサイクルエネルギーの使い道は?」「コストはどれぐらいかかるのか」といった多くの質問が上がりました。山川教授は、「熱を回収して再利用する技術自体は30年以上前に確立されており、データセンターで熱を回収して近隣ビルの暖房に活用している事例もあります。私自身、20年前にオフィスビルに導入した経験があります。しかし、当時はまだ省エネへの関心が低い時代で、全く普及しませんでした。近年、海外で高い評価を得るなど、関心の高さを感じています。建物単体での導入に加え、隣接する建物をつないでいくことで活用の可能性を広げていきたい」と語りました。