雲財講師が日本理科教育学会論文賞を受賞しました

児童教育学部児童教育学科の雲財寛講師がこのほど、日本理科教育学会論文賞を受賞。9月23日に高知大学で開かれた同学会全国大会で表彰状が贈られました。同学会は、理科教育に関する研究と共に会員相互の交流を図り、理科教育の振興普及への寄与を目的としており、幼・小・中・高・大の教員や研究者、大学院生、学生ら約2000名が所属しています。

雲財講師は、宮崎大学教育学部講師の中村大輝氏、秋田大学教育文化学部講師の原田勇希氏、岩手大学教育学部准教授の久坂哲也氏、広島大学大学院人間社会科学研究科准教授の松浦拓也氏とともに、論文「理科教育学における再現性の危機とその原因」(2021年『理科教育学研究』掲載)の執筆に加わりました。同論文は、近年教育学を含む多くの学問分野で問題となっている、過去の研究知見が再現されないという「再現性の危機」に着目し、その原因の一つとして指摘されている問題のある研究実践(Questionable research practices, QRPs)の存在をテーマに、学会誌『理科教育学研究』に掲載された過去4年間の論文におけるQRPsの状況を分析したものです。論文賞は、国内の理科教育学分野におけるQRPsの実態を明らかにするとともに、再現性問題への具体的な対応策を提案が評価されました。

雲財講師は、「“再現性の危機”は近年、心理学の分野で指摘されることが多い問題ですが、理科教育学においても同様の検証が必要ではないかという問題意識から、主著者の中村先生をはじめ、理科教育学研究分野において統計学的手法を用いることに関心の高いメンバーが集い、チームとして過去の論文の検証を進めていきました。理科教育に関する特定のテーマではなく、研究方法論にスポットを当てた論文が評価されるのは大変珍しく、共著者の一人として貢献できて大変光栄に感じています」とコメント。研究者として児童教育学部で理科教育における学習者の実態把握や指導法の開発などに取り組んでいる雲財講師は、「現在は自分の知識の限界を認識しようとする態度である“知的謙虚さ”に着目した理科教育研究を進めています。知的謙虚さは、知ったかぶりをすることなく、自らの知識を把握し、他者の考えを尊重し、その考えが妥当であればを受け入れようとする態度であり、観察・実験を通して集団で仮説を検証していく理科という教科と相性がいい概念です。教育現場での実践も視野に研究の充実を図っていきます」と話しています。