北欧学科で特別講義「ヴァイキング時代のアイスランド:発見と植民」を開催しました

文化社会学部北欧学科では、11月21日(金)に「アイスランド概論」(柴山由理子准教授)・「北欧史概説」(松本涼准教授)の合同授業で、アイスランド大学考古学教授オッリ・ヴェーステインソン氏による特別講義を開催しました。

オッリ教授はアイスランドを代表する考古学者で、キリスト教への改宗によって社会がどのように変わったかを論じた The Christianization of Iceland: Priests, Power, and Social Change 1000–1300(Oxford UP, 2000)の著者としてとくに知られています。アイスランドは元々無人島でしたが、ヴァイキング時代(750–1050年頃)に北欧の人々に発見され、870年頃から人が住み始めました。講義では “Iceland in the Viking Age: Discovery and Colonisation(ヴァイキング時代のアイスランド:発見と植民)” というテーマのもと、資源の少ない極北の島で人々がどのように生活基盤を築いていったのか、初期の産業や経済はどのようなものだったのか、そしてその痕跡が現代のアイスランドにどう残っているのかなどについて、考古学からわかることを教えていただきました。

アイスランドには、ヴァイキング時代や中世の出来事を語る「サガ」と呼ばれる物語がたくさん残っています。初期の歴史はこのサガをもとに説明されることが多いのですが、サガは語っている出来事から数百年後に書かれたため、その内容が本当に事実なのかわからないという問題を抱えています。今回はそのサガに頼らず、「発掘された遺物(モノ)だけから何が言えるのか?」という視点で講義が進められました。

盛りだくさんの内容でしたが、「3世紀のローマ帝国のコインがアイスランドで見つかったという話が興味深かった」「渡り鳥の飛んでくる方向から、西に島があることを予測したという当時の人々の知恵に感心した」などの感想が寄せられ、普段の授業ではあまり触れない話に驚いた学生が多かったようです。また、火山灰の層を調べることで、人が住み始めた年代や生活の痕跡を特定する火山灰編年学が印象に残ったという感想も多く、「アイスランドの大地そのものが歴史を語っている」というコメントもありました。

さらに、DNAの分析から、男女のルーツの違いがわかるという話にも多くの学生が興味を引かれていました。DNA研究によって、アイスランドへの初期の植民者のうち、男性の約75%はスカンディナヴィア系、女性の約62%はブリテン島やアイルランド系の祖先をもつという結果が示されています。文献資料であるサガは主にノルウェーから渡ってきた人々がアイスランドに住み着いたと語っていますが、実際の住民のルーツはもっと多様だった可能性が高いのです。「文献に依存せず、歴史をここまで解き明かせるのかと驚いた」という感想もあり、今回の講義は最新の考古学の成果を直接学べる貴重な機会となりました。