文芸創作学科の元教授、芥川賞作家の故・室井光広先生の未完の遺作『エセ物語』が刊行されました!

芥川賞作家で文芸批評家、2011年度まで文芸創作学科で教鞭をとられた室井光広先生(1955~2019)の未完の遺作『エセ物語』が、先生の教え子で文芸評論家の川口好美さんの尽力によって、法政大学出版局から刊行されることになりました。


室井先生は福島県会津の出身で、1988年にボルヘス論「零の力」で群像新人文学賞を受賞し、1994年に小説「おどるでく」で芥川賞を受賞されました(第111回)。2012年に東海大学を退職されてからは文芸雑誌「てんでんこ」を創刊し、2019年に病気で亡くなられるまでペンを手放しませんでした。『エセ物語』は「三田文学」で連載が始まり、「てんでんこ」最終号まで連載がつづけられた、750ページにおよぶ長編小説です。

※室井先生のプロフィール画像は、在職最後の年の学科紹介パンフレットに掲載されたものです。


川口さんは室井先生の指導を受けて文芸に開眼し、2017年には師匠を追うように群像新人評論賞をシモーヌ・ヴェイユ論で受賞しました。学生時代にはジェームズ・ジョイスの小説集「ダブリン市民」収録の1篇を自力で翻訳し、室井先生を驚かした、という逸話が残されています。

『エセ物語』の「後記」で、川口さんは師の遺作を次のように紹介しておられます。

〈言葉=世界のポテンシャルを極限まで押し開きながら、今ここにある生を共に革命的に生き切ってみよう。これは、そんな未完のプロジェクトにわたしたちを誘う、奇妙な、ウソみたいな物語なのです。〉