宇宙考古学セミナー「宇宙と地下からのメッセージ2023」を開催しました

情報技術センター(TRIC)では12月16日に品川キャンパスで、宇宙考古学セミナー「宇宙と地下からのメッセージ2023 古代エジプト×古代中国~宇宙考古学が解き明かす水と遺跡と古代文明」を開催しました。当日は、エジプト考古学研究の第一人者・吉村作治氏(東日本国際大学総長)、中国古代史研究の第一人者・鶴間和幸氏(学習院大学名誉教授)をはじめ、宇宙考古学研究の第一線で活躍する国内外の研究者らが、古代文明や水と遺跡に関わる最前線の研究成果を発表。研究者や古代文明に関心を持つ138名が参加しました。

開会にあたり、TRICの中島孝所長(情報理工学部教授)が登壇し、「1995年から早稲田大学と共同でエジプトのピラミッド調査を、2009年からは学習院大学と共同で中国の秦始皇帝陵の立地環境調査などを実施してきました。本日はそれぞれの共同調査に参加され、ご指導いただいている吉村先生、鶴間先生をはじめ第一線の研究者による最新の研究成果に触れてください」とあいさつしました。

セッション1「東海大学と宇宙考古学」では、まず本センターの惠多谷雅弘研究員が「宇宙考古学が解き明かす水と遺跡と古代文明」をテーマに登壇。宇宙考古学では、「地球の環境変動に伴う水環境の変化に着目し、歴史的な背景や社会現象を含めた長期的かつグローバルな視点での環境理解が重要」と指摘し、「環境条件が異なる世界中の多種多様な遺跡を対象に調査を重ね、事例ごとの課題を明らかにし、汎用性をもたせることが目標」と語りました。次に登壇した山花京子教授(文化社会学部)は「東海大学の古代エジプト研究―文理融合研究」と題して発表。TRIC、マイクロナノ研究開発センター、医学部などと協働で取り組んできた資料のデジタル化や解析調査など本学挙げての文理融合研究の成果を説明しました。エジプト・科学研究省リモートセンシング宇宙科学局教授のエル・サイード・アッバス・ザグルール氏は「宇宙考古学における日本の大学との共同研究(Joint research activities with Japanese universities in Space Archaeology)」をテーマに発表しました。

セッション2「ナイル川・紅海沿岸の考古学調査最前線」では、「エジプト地中海沿岸部における複合探査-内陸砂丘の古代経済活動を読み解く-」をテーマに長谷川奏氏(早稲田大学客員教授)が発表。サウジアラビア文化遺産庁顧問の徳永里沙氏は、サウジアラビアからリモートで「衛星データを用いたサウジアラビアの碑文調査」をテーマにTRICとの共同研究成果を紹介しました。

セッション3「始皇帝研究の最前線」では、村松弘一氏(淑徳大学教授)が「衛星データと歴史資料を用いた秦東門と海の調査」、中国・故宮博物院研究員の王睿氏が「秦東門と斉八主祭祀」をテーマに発表。鶴間氏、惠多谷研究員が主催した「秦東門」に関する調査に参加したことを振り返り、衛星データ、文献資料、現地調査に基づいて、始皇帝が胊山県(くさんけん:現在の江蘇省連雲港市)に立てたと考えられている秦東門とその関連遺構の場所や歴史的な背景を特定する試みについて紹介しました。中国・連雲港市重点文物保護研究所前所長の高偉氏は、「連雲港地域・秦東門考古発掘状況」と題して発表しました。

セッション4「パネルディスカッション―古代エジプト×古代中国~共通性を探る」では惠多谷研究員が司会を務め、吉村作治氏と鶴間和幸氏が登壇。吉村氏は半世紀以上にわたり現地発掘調査を継続してきた研究者人生を振り返り、本学の故・坂田俊文名誉教授(元TRIC所長)との共同研究で多大な業績を上げた宇宙考古学の黎明期について語りました。鶴間氏は、中国文明とエジプト文明の共通性について自身の調査・研究を絡めながら知見を披露。リモートセンシング技術の発達によって世界の古代文明や古環境の復元や、文明の比較検討ができるようになるなど宇宙考古学の可能性について語りました。

聴講した参加者からは、「古代文明と宇宙という一見、つながらないようなものが大きな成果をもたらしていたことに驚いた」「技術の発達で新たな発見があることにワクワクする」といった感想が聞かれました。

登壇者やテーマは以下の通りです。(敬称略)

◆開会あいさつ中島孝(東海大学情報技術センター所長)

◆セッション1「東海大学と宇宙考古学」
司会:村松弘一
惠多谷雅弘(東海大学情報技術センター研究員)「宇宙考古学が解き明かす水と遺跡と古代文明」
山花京子(東海大学教授)「東海大学の古代エジプト研究-文理融合研究」
El Sayed Abbas Zaghloul (エジプト・科学研究省リモートセンシング宇宙科学局教授)「Joint research activities with Japanese universities in Space Archaeology」

◆セッション2「ナイル川・紅海沿岸の考古学調査最前線」
司会:惠多谷雅弘
長谷川 奏(早稲田大学客員教授)「エジプト地中海沿岸部における複合探査-内陸砂丘の古代経済活動を読み解く」
徳永里砂(サウジアラビア文化遺産庁顧問)「衛星データを用いたサウジアラビアの碑文調査」(リモート参加)

◆セッション3「始皇帝研究の最前線」
司会:鶴間和幸
村松弘一(淑徳大学教授)「衛星データと歴史資料を用いた秦東門と海の調査」
王睿(中国・故宮博物院研究員)「秦東門と斉八主祭祀」
高偉(中国・連雲港市重点文物保護研究所前所長)「連雲港地域・秦東門考古発掘状況」

◆セッション4 パネルディスカッション「古代エジプト×古代中国~共通性を探る」
司会:惠多谷雅弘
吉村作治(東日本国際大学総長)
鶴間和幸(学習院大学名誉教授)