文化社会学部北欧学科では6月21日に湘南キャンパスで、知のコスモス「フィンランドのモダニズムから日本の『いま』を考える ―地域性、持続可能性、良い生活―」を開催しました。栃木県・宇都宮美術館の学芸員の経験を持ち、現在は文星芸術大学で非常勤講師をしながら、宇都宮大学の大学院生として大谷石を研究している近代建築・デザイン史家の橋本優子氏が講師を務めました。
教員や学生、一般市民ら約80名の参加者を前に橋本氏は、まずフィンランドをはじめとする北欧諸国で提唱された「風土的モダニズム」を紹介。「風土は、地域によって異なる物質的環境と精神的基盤から生み出されます。フィンランドでは、岩石や樹木、湖水などの自然を人間が利用することで、産業や文化が形づくられていきました」と話しました。続いて、フィンランドの建築家であるエリエル・サーリネンやアルヴァル・アールトによる代表的な建築やインテリアを解説し、「『ヘルシンキ中央駅駅舎』を手がけたサーリネンは風土と美意識を拓き、『パイミオ・チェア』や『スツール60』をデザインしたアールトは多様性や持続可能性の芽を生みました」と語りました。また、2016年から始まったフィンランドのデザイナーと岩手県のものづくり組織による「Iwatemo Project」についても触れ、「日本とフィンランドは風土が似ているため、互いの国が持つ力を掛け合わすことでよりよいデザインが生まれるのではないかと発足しました。デザインの力を通して両国が発見したことは、風土と美意識に共通性があるという点です。このプロジェクトはまだ続いており、両国がコラボすることで新たな世界観が出来上がっていき、デザイン、ものづくりをよりいっそう高めています」と話しました。
講演終了後の質疑応答では、「日本とフィンランドの文化的な共通項があるのはなぜですか?」「アールトが日本の建築美を意識するようになったきっかけは?」など、さまざまな質問が寄せられました。