2019年卒で、現在は少年漫画・青年漫画の単行本編集にたずさわる得能薫さんが、6月28日夕、母校を再訪して、後輩たちの就活指導にあたってくださいました。
聞くところでは、数日前に校了(編集作業の締めくくり)があったばかり、わざわざ有給休暇をとって駆けつけてくれたようです。
以下、質疑応答のいくつかをご紹介します。
Q 編集者になりたいと思われたのは、いつごろですか?
A 子供のころ、ジブリに夢中で、ヒロインの台詞をぜひ自分の声で読みあげてみたいという夢を抱いて、俳優を目指しました。「劇団東俳」に所属して、ドラマの子役やエキストラなど活動していた時期もあります。でも、就活を目前にひかえて、自分が役者として売れる未来が見えなかったので、演劇を諦めて編集者への道に方向転換しました。もともと本が大好きでしたから。
Q どのような就活をされたのですか?
A 元々役者に進む予定でしたので、就活に出遅れ、エントリーした出版社には軒並み、落選しました。そこで、卒業後3年間、出版社でアルバイトをしながら、出版社への再挑戦を続けることにしたのです。卒業後はコロナとぶつかってしまい、4年生の頃とは全く違った就職活動になりましたが、たまたまアルバイト先で「女性セブン」の元副編集長の方と仲良くなり、アドバイスをいただけたこともあって、現在の編集プロダクションに正規雇用で入ることができました。
Q 今のお仕事について、具体的に教えていただけますか?
A 集英社の少年誌と青年誌に掲載された漫画を、単行本用に編集しなおす仕事をしています。朝は11時から12時半に出社して、夜は11時頃まで働きます。土日は、無理してでも、きちんと休むようにしています。そうでないと、身がもちませんから。
Q 就活のときに、これをしておいてよかった、と思うことは?
A 2つあります。
1つ目は、大学の外で何かしらの活動実績をつくること。面接で、幾度も訊かれました。あなたは大学以外の場で、どんな活動をし ていましたか、と。好奇心が旺盛かどうか、そこを採用担当者は知りたいのでしょう。出版社の場合、本が好きだから編集者になりたい、というだけでは不十分です。本が好きなのは、あたりまえですから。
2つ目は、グループをつくり、他人を巻きこんで、エントリーシートを添削してもらうことです。自分のエントリーシートを他人に見てもらうことで、自分の文章を客観的にながめることができるようになります。特に私の友人達は小説を全く読まない人達なので、友人達からの疑問に答えることで、自分がどこまで業界を理解しているのか測っていました。そうすることで何が足りないのか浮き彫りになり、伝えたいことが整理しやすかったです。見返りが全くないので友人は選びますが、これはお勧めです。ちなみにこのお礼は全くしていませんでしたが、友人達とは今も一緒に旅行に行くくらい仲良しです。
Q 学生時代、これをしておけばよかったと思うことは?
A 勉強、勉強、勉強です。学科の勉強だけでなく、多種多様な知識を吸収しておくべきです。自分のなかにたくさんの棚を作っておかないと、仕事に役立ちません。知は力です。
Q 仕事で腹が立つことなど、ありませんか?
A それは、いくらでも(笑)。私が実際にかかわるのは、作家さん、担当さん、デザイナーさん、印刷所、製版所の5者です。いちばん気を遣うのは、作家さんとのやりとりですね。締切を守らない作家さんもいますし、午前3時に平気で連絡してくる人もいます。タフでないと、勤まりません。
ちなみに、得能さんの夢は、文芸書・文芸雑誌の編集者になることです。
そのために現在は、少しでも編集スキルを高めて、さまざまな企画をあたため、実績づくりに励んでいるそうです。
今後の活躍が愉しみですね。