文化社会学部北欧学科では11月26日に湘南キャンパスで、駐日フィンランド大使館駐在武官のキンモ・タルヴァイネン氏による講演会を開催しました。タルヴァイネン氏が75年ぶりに同国の駐在武官として大使館に着任したことから、同国の国防政策や意識などについて直接学ぶ機会として企画したものです。当日は武官補佐のトゥーッカ・マキ=ロヒルオマさんと武官室研修生のレイリマー・セバスティアンさんも来学。マキ=ロヒルオマさんが通訳を務め、学生や教職員ら約50名が聴講しました。
タルヴァイネン氏はまず、現在の国際情勢を解説し、「アメリカ・中国・ロシアといった国々の対立が先鋭化する中、国際法のルールが脅かされる事態が生じている」と説明。「フィンランドもこうした国際環境の変化への対応が求められている」と語りました。そのうえで、「旧来の陸・海・空だけでなく、サイバーセキュリティーや宇宙防衛の重要性も高まっている」と紹介。こうした事態に対応するため、EUの防衛とセキュリティ政策の強化に賛成し、「北大西洋条約機構(NATO)とも相互協力関係を進めつつ、北欧5カ国(アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)で北欧防衛協力(NORDEFCO)を構築するなど近隣諸国との連携を強めることで防衛力の強化を図っている」と説明しました。
また、フィンランド国防軍の組織や同国社会の中での位置づけについても解説。徴兵制度、国防に関する強い意識、十分な国民の団結はフィンランドの防衛能力の礎と語った。国や社会、価値観を守るうえでの国防の重要性が国民の中で広く共有されており、その共通認識のもとで国防軍は国土防衛のほかにも警察や消防の支援活動、国際的な平和維持活動への参加といった役割を担っていることを紹介しました。また、国防軍の施設や活動を広く市民に公開するオープン駐屯地というイベントを行っており、入隊中の軍人の家族や市民が多数訪れていることも説明。「フィンランドでは、自分たちの社会や文化を大切にしたい考える市民の割合が多く、国防軍だけでなく社会全体で国を守るという意識が広く浸透しています。そのことが国防力を高める重要な基盤になっています」と語りました。
講演終了後には、事前に学生から集めた質問に答える形で、ロシアやスウェーデンとの関係や、国防のために重視している政策などについても解説しました。学生たちからは、「フィンランドの防衛について武官の方から詳しく聞けたのがよかった」「国防のポリシーに、技術を常にアップデートすることや透明性を大事にするという考え方がある点がフィンランドらしいと感じました」「国を維持していくうえでの軍事力の重要性をあらためて考える機会になりました。今回の講義を機に、日本の自衛隊についても調べてみようと思うようになりました」といった感想が聞かれました。