学科教員リレーエッセイ⑩ 水島 久光 教授 「Z世代」と「鬼滅の刃」

「メディアは時代の鏡である」とよく言われますが、私たちは、その鏡自体の変化をきちんと認識しているでしょうか――広報メディア学科には、そうした「そもそも論」的にこだわる学生たちも少なくありません。2020年秋から始まった新しい科目「アドバンスゼミナール」では、そうした問題意識にキャリア支援の観点も交え、「メディアの現場で“今”起こっていること」に関する調査研究に取り組んでいます。

2021年秋学期は、SNSでの創作活動やアイドルに対する「推し活」、さらには新たなメディア環境である「メタバース」の受容動向などを通じて、「Z世代」について考えてきました。そして学生たちからの報告を受けて、私自身の固定観念が音を立てて崩れていく経験をしました。もの心つく頃からタブレットやスマホ、オンラインコンテンツと接して育ってきた学生たちの価値観はとても新鮮で、優しく、合理的だという印象を持ちました。と同時に、上の世代がどれだけそれを理解しようとしているが、強い疑問を抱きました。
    
その最近感じた「Z世代」に対する印象を、東海教育研究所が発行する『望星』2月号「特集:スマホの刃」でお話ししたところ、記事を読んでくださった「望星学塾」(東海大学が運営する社会教育機関)メンバーが特別講座企画(3月12日開催)にしてくださいました。

特別講座企画のご案内

「メディア技術と世界認識~リテラシーの本質と世代論の超克」というテーマです。ハイデガーの哲学も交えながら、メディア環境の変化が世代間の分断を推し進めるリスクと、反対に共生を拓く可能性の両面をもつという話をしてみたいと思っています。

「刃」つながりではないですが、世代を超えたコミュニケーションを媒介するコンテンツとして、ここ数年『鬼滅の刃』に注目しています。ちょうど2月13日は「遊郭編」の最終回でしたが、深夜帯にも関わらず、世帯視聴率は9.1%、タイムシフト視聴を合わせるとゴールデンのスペシャルドラマ並みの反響だったとのこと。一昨年来の「社会現象」は続いているといえます。舞台設定からして「コアターゲットのローティーンには厳しいのでは?」と心配されましたが、大人向けの物語として広く受容されたということでしょう。
この『鬼滅の刃』を分析した研究成果を学会など様々なところで発表していますが、昨年4月は東海大学ヨーロッパ学術センターが共催する日本文化紹介イベント「コペンハーゲンサクラフェスティバル」(オンライン)に招いていただき、デンマークの皆さんに向けてお話しました。今年(2022)も、その続編を予定しています。世代だけでなく、地域や言語を超えるコンテンツには、私たち人類の普遍的な価値観を刺激するツボがあります。「大正」という時代の歴史性や、主人公・炭治郎に象徴的に表現された「Z世代」的な優しさを軸に、昨年よりも少し物語論的に掘り下げた話をしてみたいと準備中です。ご期待ください!

👉昨年の「コペンハーゲンサクラフェスティバル」で流した映像12kimetsu newfinal.mp4 – Google ドライブ

👉今年のサイト(準備中)https://sakurafestival.dk/