北欧学科教員リレーエッセイ:佐保 吉一教授「デンマークがSNS禁止へ~15歳未満のソーシャルメディア利用を禁止する方針~」

 デンマーク政府は2025年11月7日、デジタル化担当大臣を通じて、15歳未満の子どもによるソーシャルメディアの利用禁止の方針を発表しました。但し、保護者の同意があれば13歳以上の子どもには、特例として特定のプラットフォームの使用を許可するとしています。

フレデリクセン首相(首相府HPより)

 この子供に対するSNSを制限しようという議論はもともとあったのですが、今回の方針決定の契機となったのが、メッテ・フレデリクセン首相が国会の開会(10月8日)に行なった演説です。そこでは新しいテクノロジーの有用性を認識した上で、次のようにSNSを制限する理由が述べられています。
 「現実的に我々は、モンスターを好き勝手にさせすぎたようです。これまでにないほど多くの子どもと若者が恐怖や抑うつ状態で苦しんでいます。本を読むことや集中することに困難を感じている人が大勢います・・・携帯電話とソーシャルメディアが子ども達のかけがえのない子ども時代を奪っているのです」

 この演説がきっかけとなって与野党で方針が共有され、国会での法案成立が確実となったことから、今回デジタル化担当大臣の発表となったのです。どのプラットフォームを認めるのか、罰則があるのか等詳細は今後議論して詰めていくことになります。
 現在はAIがめざましい勢いで発展を遂げるデジタル社会の真只中で、子ども達のSNS利用を禁止するという措置は、自由を制限することに繋がりますが、全体善のために一部の自由を制限することは、これまで北欧では多々ありました。日本とは違って子ども達の健全な成長を大人が真剣に考えている証拠だと思います。日本ではこれから教科書を始めとする「教育のデジタル化」を推進しようとしていますが、その面で先行した北欧では、逆に紙の教科書に戻す動きがあります。未来の社会を担う子ども達にとってはどちらがよいのでしょうか。日本でも真剣に議論する必要があります。今後も様々な面でデジタル化の先輩である、デンマークをはじめとする北欧の動向から目が離せません。