ラテン語が公用語の古典学アカデミアに滞在しました

 イタリアのローマから東南に25kmほどのフラスカーティ市に、ラテン語を公用語とする古典学アカデミアがあります。今年3月半ばに滞在する機会があり、そのユニークな教育機関について、紹介したいと思います。

 かつてヨーロッパでは、古典ギリシャ語やラテン語の教育が重視されていましたが、現代の社会でこれらの古典語は死語と呼ばれ、日常的には使われていません。このような古典語の教育を復活させたのが、この古典学アカデミア(正式名称は、アカデミア・ヴィヴァリウム・ノヴム)です。2016年、このフラスカ-テイの地が本拠地となりました。
 この古典学アカデミアには、世界各地から約40人の若者が集まり、寄宿生活を行っています。教育内容は、古典ギリシャ語・ラテン語、古代哲学、音楽などです。日常の会話は、基本的にラテン語で行われています。私たちゲストは、一部の専門家を除いて、ラテン語ではなく、主に英語でやりとりを行いました。
 教育内容の充実とともに、学校の建物もとても興味深く思われます。16世紀に建てられた、別荘建築(ファルコニエッリ荘)は、その後、何度かの改装を経て、現在に至った歴史的建造物で、この別荘建築を学校として活用しています。じつは、この地域は古代ローマ時代に貴族たちが別荘を所有していた景勝の地でもあります。古典学アカデミアでは、歴史的建造物を積極的に活用しながら、21世紀の教育機関としてよみがえらせたのです。
 ルイジ・ミラリア校長は、ナポリ出身で、祖父はナポリ市長をつとめた方です。ミラリア校長は約30年前から、学校にふさわしい土地と建造物を探してきましたが、2016年、ついにこのフラスカーティの地のルネッサンス時代の建造物が選ばれたと聞きました。学校の運営は、さまざまな寄付で成り立っているそうです。目まぐるしく変化する現代社会で、古典文化を継承し、現代に活かしていこうとする、イタリア社会の底力のようなものを実感した滞在になりました。

ヨーロッパ・アメリカ学科教授 中村 るい