フィンランド前首相のサンナ・マリン氏を招いた特別講義・特別対談を開催しました

文化社会学部北欧学科では10月15日に湘南キャンパスで、フィンランド前首相のサンナ・マリン氏を招いた特別講義・特別対談「北欧と民主主義 若者の政治参加について考える」を開催しました。若者の政治参加を促進する活動に取り組む一般社団法人FIFTYS PROJECT代表の能條桃子氏との対談形式で、学生や教職員ら280名が聴講。民主主義や社会の変革に向けて行動することの大切さについて考えました。

マリン氏は2019年、34歳でフィンランドの首相に就任し、当時の現役政府首脳として世界最年少となりました。在任中には新型コロナウイルス感染症への対応や、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、フィンランド共和国大統領とともに北大西洋条約機構(NATO)へ加盟申請するなど、歴史的な決断を重ねてきました。今回の講義・対談は、同氏の自伝『行動こそ希望! 34歳、一国を率いる』(ホーム社)の日本での刊行を記念して実現したもので、本学が長年にわたり培ってきた北欧との交流や、北欧研究に取り組む教育・研究環境が開催につながりました。

当日は、堀真奈美学長補佐(健康学部教授)が開会のあいさつに立ち、本学がデンマークの教育思想家N・F・S・グルントヴィの思想に影響を受けてきた歴史や、日本で唯一の北欧学科を設置していることを紹介。また、フィンランドが教育やイノベーション、ジェンダー平等、市民の政治参加などの分野で国際的に注目されていることに触れ、「世界幸福度ランキングでも1位のフィンランドについて、マリン氏の経験や考えを聞けることを楽しみにしています」と期待を寄せました。本学科の柴山由理子准教授が通訳を務めた対談では、はじめに能條氏が、「デンマーク留学中に若者が日常的に政治について語り合い、高い投票率を維持している姿に刺激を受け、日本でも若い世代の政治参加を促す活動を始めました」と自身の活動の経緯を紹介し、続いてマリン氏が、著書を執筆した理由について説明。首相在任中に直面した課題や教育・社会保障制度の改革などを振り返り、「国民の生活に大きな影響を及ぼす決断の過程を伝える責任を感じた」と説明。著書のタイトルに込めた思いについて、「希望は空から降ってくるものではなく、私たち自身の行動によって生み出すものです。平等や民主主義、気候変動などの課題に向き合い、行動することで、自分自身や周囲の人々に希望を生み出すことができます」と語りました。

能條氏から若くして政治の世界に飛び込んだ経緯を問われると、マリン氏は、「もともと政治家を目指していたわけではなく、気候変動や少数者の権利など、社会が抱える課題への問題意識が活動の出発点でした。充実した教育や福祉制度に支えられて自らも成長したことから、社会に恩返しをしたいという思いで政治活動を始めました」と振り返りました。また、「自分一人が行動しても社会は変わらない」という若者の意識についても言及。フィンランドが現在の福祉国家へと発展した歴史や、世界各地で人々が権利を獲得してきた歩みを例に挙げ、「社会を変えてきたのは特別な能力を持つ人ではなく、普通の人々です。自分には何もできないという思い込みを捨ててほしい」と呼びかけました。さらに、34歳で首相に就任した際には、自身も大きな不安を抱いていたことを明かし、「誰もが最初から十分な準備を整えているわけではありません。自分にはまだできないと思っても、勇気を持って挑戦することが大切です」と強調。現実の問題やリスクを正面から捉え、よりよい未来に向けて行動することの重要性を訴えました。

対談後には学生からも質問が寄せられ、若くしてリーダーとしての信頼を得た経験や、フィンランドの平等を重視する社会の背景などについて活発な質疑応答が行われました。マリン氏は、「政治家としての地位は自然に与えられたものではなく、自らの信念を貫き、市民や仲間からの支持と信頼を積み重ねてきた結果です。フィンランド社会では一人ひとりが等しい価値を持ち、機会と責任を分かち合うことを大切にしています」と語りました。終了後には木村英樹学長があいさつし、「本学では教育活動において『挑戦』の精神を大切にしていますが、マリン氏の著書のタイトルである『行動こそ希望』に共通する考え方だと感じています。今日の貴重な機会を皆さん自身の挑戦や行動につなげ、希望を実現するきっかけにしてほしい」と呼びかけました。

聴講した学生たちは「講演を聞き、首相になるまでの経緯やマリン氏の信念についてもっと深く知りたいと思い、著書も購入しました。マリン氏の姿から、年齢にかかわらず強い信念を持って挑戦し続けることの大切さを学びました」「今回のイベントを通して、政治への興味がさらに深まりました。自分の一票が生活に直結する選挙についても、これまで以上に情報を集め、積極的に参加したいと思いました」と話していました。