大学院工学研究科を2022年度に修了した小森貴文さんらが執筆した、優れた耐久性と柔軟性を持った熱電材料「単層カーボンナノチューブ」に関する論文4月17日付けで、国際ジャーナル『Diamond and Related Materials』に掲載されました。
小森さんらの論文は「Effect of Seebeck coefficient distribution across pn-junction in carbon nanotube films for photothermoelectric power generation by localized sunlight irradiation(局所太陽光照射による高熱発電におけるpn接合カーボンナノチューブ膜のゼーベック係数分布の影響)」。所属した高尻雅之教授(工学部)の研究室では、熱を電気に変換する熱電変換材料の研究に取り組んでいます。カーボンナノチューブには、プラスの電気を発生させるp型と、マイナスの電気を生むn型の2種類の性質があります。それぞれの性質を持つ分散液をカーボンナノチューブ薄膜に垂らして(pn接合)、局所的に人工太陽光を照射。照射部分と非照射部分との温度差から発生した電圧の出力を4時間計測しました。その結果、一定の温度差を保ち続けて約0.6 mVを維持し、安定的な電圧を出力させ続けることに成功しました。このpn接合を熱電変換に生かした研究は、同研究科を21年度に修了した則正雄賀さんが19年度から始めたもので、小森さんが則正さんの研究を引き継いで修士論文としてまとめました。
指導した高尻教授は、「温度差で発生した電圧は一時的なものかと思っていましたが、4時間安定して出力されたということは、それ以上の時間で計測を続けても電圧が安定する可能性を示唆するものです。今回の研究で発見した課題について、大学院生や学生とともにさらに研究を進めていきたい」と語りました。また、高尻教授の研究室に所属し、実験や学会発表のサポートを通じて論文掲載に貢献した星野光稀さんと山本久敏さん(大学院工学研究科1年次生)、高田悠平さん(工学部4年次生)は、「小森さんの研究を手伝う中で、自分たちが取り組んでいる研究についても新たな視点を持つことができました。また、研究に対する計画や過去に行われてきた関連研究への理解など、熱心に研究に取り組む小森さんの姿を見て刺激を受けました」と話しました。