工学部の落合成行教授の研究成果がアメリカトライボロジー学会の学術誌で紹介されました

工学部機械システム工学科の落合成行教授の研究室がこれまで取り組んできた研究内容がこのほど、アメリカトライボロジー学会の学術誌『TLT(Tribologists and Lubrication Engineers)』に掲載されました。同誌はアメリカのSTLE(Society of Tribologists and Lubrication Engineers)が発行する月刊誌で、トライボロジーと潤滑に関する基礎から将来の技術、産業界の動向や専門家へのインタビューなどが掲載され、読者は世界で13000名にのぼります。

紹介された記事は、特集「Friction reduction through surface texturing fluid film bearings(表面テクスチャリングによる流体ベアリングの摩擦低減)」で、落合教授らが手がけてきた過去十数年の研究内容について、アメリカの研究者の評価なども交えて紹介。表面のテクスチャによって性能が大きく変わるジャーナルベアリングの性能向上に関する研究で、トンボが羽の翅脈にある微細な突起構造を利用して抵抗や摩擦を軽減することに着目し、ジャーナルベアリングに適用すると高速回転時の摩擦トルクが減少することを確認した成果についても丁寧に解説しています。また、スラストベアリング(軸方向の荷重を支えるように設計されたベアリング)においても独自の高速試験装置を使用して摩擦トルクを測定および評価し、新しいテクスチャリングを提案したことなどを紹介。落合教授の「最適設計により軸受特性の向上が期待でき、これまで想像もできなかった形状を発見できる可能性がある」とのコメントも引用されています。

アメリカの権威ある学術誌で特集されたことについて落合教授は、「自然界の生物の形状やその機能などから学び、技術開発やものづくりに生かす“バイオミメティクス”は、本学部の故・橋本巨元教授が推進され、砂見雄太准教授や研究室の歴代メンバーと共に長年にわたり研究してきたテーマでもあります。そこから今日までの研究成果が広く紹介されたことは率直にうれしい。今回の紹介記事は、アメリカでの学会などを通して地道に交流を続けてきた表れでもあります。学生や大学院生たちにも、自ら考えることを大事にしながらぜひ積極的に動いてほしいですね」と話しました。重ねて、「日本の技術開発は経済的な停滞を経てこれからが正念場。そうした状況の中でエンジンやトランスミッションなどの自動車技術について熟知している日本の底力を示す機会がくるでしょう。本学部には、卒研や修論をめぐる失敗や成功を繰り返して成長し発想のきっかけをつかむ伝統が、先輩から後輩へ連綿と受け継がれており、それがさらに研究を深め進めていく力になっていると感じます。これからも学生や企業と協力して、研究に取り組んでいきたいと思います」と話しています。