総合科学技術研究所の千賀研究員が「MAGDAコンファレンス」で優秀講演論文賞を受賞しました

総合科学技術研究所の千賀麻利子研究員が、11月10、11日に長野県で開催された「第34回MAGDAコンファレンスin松本~電磁現象及び電磁力に関するコンファレンス~」(主催=日本AEM学会)で優秀講演論文賞を受賞しました。電磁に関する幅広い研究・技術の成果を発表する場として毎年開催されているもので、今年度は6件が入賞。千賀研究員は2年連続での受賞となりました。

受賞した研究テーマは、「熱音響発電機に用いるリニア発電機の比音響インピーダンス制御に関する検討」です。千賀研究員は、細い管の両側に温度差を設けることで発生する音響(音波振動)現象を用いて冷却や加熱、発電する「熱音響機関」の研究が専門。今回は、熱音響機関とリニア発電機を接続する際に、リニア発電機の機械的なばねを電気的なばねに置き換えることで、従来のばねで受けられる音波の振幅の制限をなくすことができる手法について検討しました。リニア発電機は外部から加えられた往復運動のエネルギーを受け、磁場中に置かれたコイルの電磁誘導現象により発電します。しかし、可動子をばねに接続して共振させる必要があるため、特定の運転条件(周波数など)でないと発電できないことに加え、ばねが壊れない範囲での音波の振幅しか受けられないといった欠点がありました。千賀研究員は共振用のばねを無くす代わりに、フィードバック制御を用いることで、さまざまな周波数範囲と振幅で発電を可能とする方式を検討。リニア発電機から安定した出力を取り出すことができる、高出力発電システムの実現可能性を見出しました。

本研究は、千賀研究員が本学在学時に指導教員だった長谷川真也教授(総合科学技術研究所、工学部機械工学科兼務)をはじめ、木村英樹教授(工学部機械システム工学科、本学学長)、リニア研究の第一人者である信州大学の水野勉特任教授、佐藤光秀准教授らと共同で進めてきました。受賞について、「熱音響機関の研究を別の分野にも応用できたらと考え取り組んできた研究なので、電磁現象や電磁力に特化した学会で2年連続受賞できたことをとてもうれしく思います。この技術を用いて、今後は廃熱発電技術を社会実装につなげたい」と話しています。

長谷川教授は、「千賀さんが最初に研究室に所属した年から10年以上経ちますが、これまでの経験を生かして独立したテーマの研究を実行し、成果を挙げたことはとても誇らしい。制御によってリニア発電機から物理的ばねを無くすことは、新しい研究内容なので、今後の展開が楽しみです」とコメント。また、木村教授は、「リニア発電機は、スピーカーと反対の原理で音波を受けて発電する仕組みであると同時に、電力を加えることで音波を発生することもできます。本研究は、機械的なばねを電気的なばねに置き換える新しいアプローチ。学園の創立者である松前重義博士が、長距離電話通信に装荷コイルを使わない“無装荷ケーブル通信方式”を発明したことにヒントを得た画期的なアイデアだと思います」と語りました。