大学院工学研究科機械工学専攻2年次生の玉田麻樹雄さんと指導教員の砂見雄太准教授(工学部機械工学科)が、アメリカ機械学会の情報記憶・処理システム部門の最優秀論文賞を受賞しました。同賞は、6月24、25日にオンライン開催された同部門の年次大会参加者の中から、特に優れた発表を行った研究者に贈られるものです。同学会では、同2年次生の西田武史さんも入賞し、大会参加費が免除されました。
玉田さんは、新素材メソポーラスシリカの加工法を研究しています。この素材は、数㎚から数十㎚の孔が規則的に並んだ構造を持っている半透明の物質で、表面積が大きく、吸着性が高いことから化学反応を促進する触媒や汚染物質の吸着物質として期待されています。その一方で、効果的に大量生産できる加工法が見つかっていない欠点がありました。玉田さんは、さまざまな厚さのものを大量生産できるロール・ツー・ロール生産方式(R2R法)を使って薄膜を作製する手法を提案。膜の厚さや細孔の大きさを制御できることを明らかにし、より幅広い分野に応用できる可能性を示しました。一方西田さんは、R2R法を用いて長い製品を作る際にロールの中心部付近で起きている現象について研究。本学の橋本巨名誉教授らが培ってきた成果をもとに、芯の近くでシワやゆがみなどのトラブルが生じてしまう理由を従来よりも正確に解析する手法を提案しました。
玉田さんは、「東海大で長年研究されてきたR2R法の新しい可能性を示せたことをなによりうれしく思います。この手法を用いれば、コンパクトかつ簡便に製造することができるため、メソポーラスシリカの応用の可能性もさらに高まると期待しています。また個人的には、実験や考察が期待通りに進まなかった時もあきらめずに続けてきたことが成果につながりました。大学院修了後は企業で研究に従事するため、これからもさまざまな素材が持つ新たな可能性を拓き、社会に貢献したい」と語っています。西田さんは、「研究室では企業との共同研究も多く、常に高い緊張感をもって取り組む中で、人間的にも成長できたと感じています。特に大学院に進学してからは、後輩の指導にもあたりながら研究チームをマネジメントする経験も積むことができました。この経験は社会人になるにあたっても大きな財産になると考えています」と話しています。