工学部建築学科を今年3月に卒業した三尾圭祐さん(指導教員=岩崎克也教授)が、2月28日にオンラインで開催された日本建築家協会(JIA)神奈川の卒業設計コンクールで「総合資格賞」を受賞しました。神奈川県内にキャンパスのある8大学から選出された24の優秀作品で争うコンクールで、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて今年度はWEBビデオ会議システム「Zoom」で実施。1次審査では学生が資料を使って3分で説明し、10作品に絞られた2次審査では補足説明と審査員の質問に答え、金賞、銀賞、銅賞、総合資格賞、その他審査員特別賞など8名が表彰されました。
三尾さんのテーマは「交差する都市の原風景~モルフェームを用いたこれからの渋谷商業空間の再構築~」です。他とは違う価値を持ち、歴史的な時間軸や人間と有機的な結びつきを持っていた「場所」が、都市の開発や発展が進む中でそれらが失われた「非場所化」しつつある点に着目。「昨今の映画などに出てくる田園風景や都市の景色に多くの人が感動するのは、技術が進歩し、均一的な建物や風景が増える中で、それらが消えつつあるからだと思います。面白い建築というよりも街や建物の個性や汚い部分、猥雑な感じを残し、街としてのつながりや愛着のある空間をつくることで、人と都市をつなげていく効果を生み出したいと考えました」と話します。そこで、「場所性を取り入れた商業施設の提案」として、開発が進みつつある渋谷駅周辺をフィールドに設定。かつて芸者町として栄え、今も独特な空間を形成する雑居ビルが残る東京都渋谷区円山町で実地調査を行いました。建物の外観や内装、線路の高架や小道の風景など、街を形成する空間要素(モルフェーム)を撮影し、「融合空間」「動空間」「伝える空間」など12種類に分類。いくつかの空間要素を組み合わせて、場所性を示す疑似的なモデルを作り、それを建築空間に落とし込んで商業施設の模型を完成させました。
地下には中心部にギャラリーを設け、地上1階部分には渋谷、円山町の2つの出口で導線を分けているほか、最上階は屋外空間から円山町を見渡すことができ、貸しスペースを設置することで外と中の一体的な使い方も可能になっています。学科内の選考会で1位に選ばれ、今回のコンクールに進んだ三尾さんは、「想像していなかった結果に驚きましたが、従来の街の個性を建物の中に残せたのではないかと考えています」と話します。4月からは建設会社に就職し、「1年間、現場でじっくり学んで、2年目以降は設計業務に携わる予定です。1級建築士の資格を取得し、岩崎研究室でご指導いただいた設計に関する取り組み方や知識を生かしてさまざまな商業施設の設計に携わりたい」と目標を語りました。