大学院工学研究科応用理化学専攻2年次生の澤原馨登さん(指導教員=源馬龍太講師・工学部材料科学科)が、9月14日から17日までオンラインで開催された日本金属学会の「2021年秋期講演大会」で優秀ポスター賞を受賞しました。
今回発表した研究テーマは「水素吸蔵合金を用いたメカノケミカルCO₂メタネーションにおける原子状水素供給の影響」です。CO₂(二酸化炭素)をCH₄(メタン)に変換するためには200~300℃の熱を加える方法が一般的ですが、澤原さんは水素貯蔵量の多いLaNi₅(ランタンニッケルファイブ)とパチンコ玉ほどの鉄の玉を金属のポットに入れて振動を加える「ボールミリング法」を応用し、熱を加えないで変換する独自の実験装置を開発。その中で、ポット内部でLaNi₅と鉄の玉がぶつかって放出された水素がCO₂と合わさってCH₄化する「CO₂メタネーション」のプロセスを可視化したことが評価されました。「地球温暖化の原因であるCO₂を都市ガスの主成分であるCH₄に変換できれば、資源循環型社会の実現に向けた一歩になるのではないかと考えました。CO₂メタネーションにはまだ課題が多く、すぐにCO₂削減効果が出るわけではありませんが、ほかのエネルギー分野にも活用できる基礎研究として面白い結果が出せたと感じています」と話しました。
工学部4年次生で源馬講師の研究室に所属した時からこの研究に取り組んできた澤原さんは、「最初の1年間は工具を片手に独自の実験装置を作るために費やし、その後1年半かけてやっとCO₂メタネーションのプロセスを導き出しました。学会発表では、審査員の方々から厳しい言葉も多くいただいていたので、まさか自分が受賞できるとは思っていませんでしたが、長年の成果が実を結び、驚きと喜びでいっぱいです」とコメント。修士課程修了後も水素の研究を続ける予定で、指導に当たる源馬講師は、「日本金属学会での受賞は本研究室では初めてのことで、大変うれしく思っています。研究は思いがけないことの連続です。いい結果も悪い結果も真摯に受け止め、投げだすことなく続けることが大切。これからも研究を続け、多くのことを学んでほしい」と期待を寄せました。