商船三井など3社と航空宇宙工学技術を取り入れた船舶の風力推進に関する共同研究を行うことで合意しました

 東海大学ではこのほど、株式会社商船三井と商船三井テクノトレード株式会社(MOLTT)、株式会社三井造船昭島研究所(三井昭研)と、航空宇宙工学技術を取り入れた船舶の風力推進に関する共同研究を行うことで合意しました。本学からは流体工学や流体シミュレーション分野を専門とする工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻の福田紘大准教授をはじめ、研究室の大学院生、学生3名が参加します。

 商船三井、MOLTT、三井昭研では風力を推進力に変え、温室効果ガス(GHG)排出を削減する「ISHIN船型」の共同開発および、船舶への採用を進めてきました。この船型は、船首・船側方向からの風圧力を低減し、風の流れをスムーズにするとともに、斜め向かい風から受ける揚力を船舶の推進力として利用することができます。現状では北米航路運航において約5%のGHG排出削減が可能となっており、今後は福田准教授らが持つ宇宙工学分野の技術をさらに導入することで、約12%のGHG削減を目指します。また、本研究は日本舶用工業会が募集した2022年度「新製品開発助成事業」に採択されており、日本財団の助成を得て、社会実装に向けた研究開発を進めていきます。

 福田研究室ではロケットおよび航空機の流体力学特性の把握をはじめ、ソーラーカーやソーラー無人飛行機の開発、さらには流体シミュレーションの医療分野への応用など、幅広い研究活動を展開しています。船舶開発の分野では、研究室に所属する福島幸大さん(大学院工学研究科2年次生)らが18年度から20年度にかけて「船体の上部構造物の抵抗低減の検討と燃費評価」について研究を行い、国際会議などで成果発表をしています。この研究は、既存船の上部構造物に審査や認証の取り直しを必要としない範囲で空力デバイスを取り付け、航行時の空気抵抗低減を目指したものです。福島さんは、「これまでの研究成果の多くは今回の共同研究でも活かせるので、社会実装につながる成果を残したい」と意気込みを語っています。また、福島さんとともに研究に参加する濱岡秀星さん(工学部4年次生)と渡邉友貴さん(同)は、「大きなプロジェクトに参加することにプレッシャーもありますが、貴重な経験を積みながら開発に貢献したい」と口をそろえています。

 福田准教授は、「本学ではこれまで、空気抵抗を減らすための研究だけでなく、風を上手く使って、活かすための研究を積み重ねてきました。カーボンニュートラルが推進される現代社会において、これらの知見は幅広く活用することが可能です。本研究でも社会貢献につながる成果を残すべく、学生とともにまずは実装・製品化に向けたコンセプト設計を進めていきます」と話しています。