健康学部では8月26日から9月6日まで、「フィールドワークC」の授業の一環として、初めてとなるデンマーク研修を実施しました。2年次生以上の選択科目で、「健康社会の実現」をテーマに実体験を通して社会福祉の援助活動や制度のあり方などについて自ら考える力を育成することを目指すものです。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で過去2年間は開講できず今年度初めてデンマークを訪問。菱川愛教授と市川享子講師が引率し、2年次生の宮岡樹希さん、石井希依さん、川田千陽さんが参加しました
研修では、まずコペンハーゲン近郊の東海大学ヨーロッパ学術センターに滞在し就労センターのほか、“The good life for elderly people”をモットーにした高齢者へのボランティアなどを支援しているNGOを訪問。東海大学付属デンマーク校の施設と教育理念を引き継いだ教育機関として2009年に開設された望星国民高等学校では施設見学や音楽の授業に参加し、コペンハーゲン大学では日本語を専攻する大学院生と交流しました。両校では、事前学習としてまとめた「日本とデンマークの幸福度の違い」についてのプレゼンテーションも実施。世界幸福度ランキング2位のデンマークに対し、日本は先進国の中で最下位にあたる54位であることから、国民の幸福に対する考え方や福祉の体制、仕事や休暇のバランスなどを比較して発表しました。国立病院内にある認知症研究センターに続いて訪れた認知症ケアセンターでは、Person-Centeredの理念に基づく支援のあり方について学びを深めました。後半はオーフスに移動。本学医学部看護学科と学術交流協定を締結するVIAユニバーシティカレッジに訪れ、健康と福祉テクノロジー研究センターのKarin博士らが推進する「メンタルヘルスとテクノロジー」に関する各研究について学術交流をしました。午後は大学に隣接する美術館を訪れ、精神疾患を抱えながらも才能を開花させた芸術家の軌跡と芸術的世界についてレクチャーも受けました
9月20日には湘南校舎5号館で本学部教員向けの報告会を開催し、3名が研修の成果と学びをもとにプレゼンテーションしました。宮岡さんは、「日本の福祉施設では食事や遊びなどの時間が決まっていて、介護士の管理下で全員が同じ生活を送っていますが、デンマークの認知症ケアセンターでは一人ひとりが自立しており、建物の地下にはスーパーやビリヤード場、バーなどもありました。介護士はサポート役に徹し、患者はそれまでと変わらない生活を送っていて、福祉に対する概念が覆されました」と研修を通じて得た学びを強調しました。石井さんは、「デンマークの人々の生活からは『余裕』を感じました。福祉サービスや奨学金などが充実しており、ワークとライフの両立ができていて、生活に余裕があるから助け合う気持ちが生まれ、違う価値観や多様性を認め合っているのだと思います」と話しました。川田さんは「日本の企業では残業が常態化していますが、デンマークは勤務時間になったら全員が帰宅し、家族との時間を大切にしているそうです。長期休暇も積極的に取得しており、そういった働き方も幸福度につながっているのではないでしょうか」とまとめました。