健康学部と医学部が昭和薬科大学と共同で「多職種連携チーム医療演習」を実施しました

健康学部と医学部では4月17日と5月8日に、学術交流協定を締結している昭和薬科大学との共同による「多職種連携チーム医療演習」を初めて実施しました。この授業は、医師、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師を目指す学生が各職種の役割を理解するとともに、それぞれの職種の特性を生かしながら連携してチーム医療を実現するための知識や技能、態度の修得を目指すものです。健康学部からは「多職種連携論」を履修する3、4年次生34名が、健康科学研究科の大学院生2名とともに参加しました。総勢360名余の学生は、各学科が混在した10名程度のチームに分かれ、2日ともWEBビデオ会議システム「Zoom」のブレイクアウトルーム機能を用いて、患者の事例について多角的に議論しました。

健康学部での学びは健康増進や疾病予防といった「一次予防」が主であり、また参加者の中にはソーシャルワーカー志望以外の学生もいたため、2回の演習それぞれの前後に授業を実施。多職種連携学習の意義、国外・国内の動向を学習し、ソーシャルワークの機能について復習したうえで、多職種連携チームでの役割、効果的コミュニケーションなどを学びました。演習で取り組む事例は5つあるため、担当シナリオごとのグループで読み込み、必要な情報確認やチームに提示する意見を準備しました。

初日は、演習に先立って医学部の川田浩志副学部長(医学科長、内科学系血液・腫瘍内科学)、城生弘美副学部長(看護学科教授)、本学部の中野いずみ学部長補佐(堀越由紀子教授が代読)、昭和薬科大学医療薬学教育研究センター長の廣原正宜教授があいさつ。学生たちは教員をファシリテーターとして指定された事例について討議し、患者の病態や診断、治療、ケアをはじめ、患者の希望や家族状況、経済状況といった心理的、社会的、倫理的問題などについても意見を交わしました。最終日にはチームとして目指す方向性を決定して発表し、ファシリテーターが優秀な討議・発表をしたチームを選んで表彰しました。

門脇未来さん(4年次生)は、「職種が違う人が集まり、意見を交わすことで、自分とは異なる視点が見えてきて、多職種連携の大切さを実感しました。他の職種の仕事を知っているのと知らないのとではソーシャルワーカーとしてのかかわり方も変わってくると思います。私は栄養分野を中心に学んでいますが、病気が進行してからでは患者さんにかかる負担が大きいので、健康学部が目指す1次予防の重要性もあらためて感じました」とコメント。社会福祉士を志望する福田南望さん(3年次生)は、「病気の症状や投薬の量などわからないことも多かったのですが、事前に厚生労働省のホームページなどを見ながら勉強して臨みました。参加者の中でも私が最年少でしたが、患者さんの気持ちを代弁するのがソーシャルワーカーの仕事なので、希望に沿えるように“譲れないところは譲れない”としっかり発言することを心がけました。それぞれの立場から正しいと思う意見をぶつけ合い、折衷案を探していく作業は勉強になりました」と語りました。

指導に当たった堀越教授は、「将来、健康に関連するどのような道に進むとしても、医療分野の多職種連携チームを模擬的に経験することは、異なる専門や立場の人たちと協働する際に役立つと思います。また、患者を中心に据えた医療のあり方や、医療従事者と治療を受ける当事者の意識や意見の違いを知ることも非常に大切です。今回の事例でも、たとえば“病状が悪化すると困るから治療を勧める”と直線的に考えるのではなく、相手と密にコミュニケーションをとり、その人の考え方、周囲の環境、金銭面の問題などを考慮し、その人にフィットした提案をしなくてはいけないと実感できたのではないでしょうか。演習後にファシリテーターや運営委員で行ったミーティングでは、本学部の学生が医学生らとは違った視点で発言したことで視野が広がったという意見も多く聞きました。今後も連携を続け、学生にとって幅広い学びを実践していきたい」と展望を語っています。